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社内で利用するSaaSの数が、気づけば把握しきれないほど増えている。そうした状況に直面している情シス担当者は、決して少なくないのではないでしょうか。
クラウドサービスの導入ハードルが下がった結果、各部門が独自にSaaSを契約する動きが加速しています。月額課金というビジネスモデルの性質上、「試しに使ってみよう」という判断が積み重なり、気がつけば同じ機能を持つツールが複数社内に存在していた、退職者のアカウントがそのまま残り続けていたといった状況が生まれます。
海外のSaaS管理プラットフォームZyloの調査では、契約しているSaaSライセンスの53%が30日間一度も使われていないという結果が報告されています。一般的に、SaaS支出の2〜3割程度が未使用ライセンスや重複ツールに費やされているとも指摘されており、見直しの余地は決して小さくありません。
この記事では、SaaSポートフォリオを体系的に最適化するための手順とフレームワークを解説します。棚卸しの始め方から重複排除の判断基準、そして継続的な管理体制の整え方まで、実務で使える内容をお届けします。
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参考:50 Quick SaaS Statistics Every Business Should Know(CloudZero)
SaaSポートフォリオ最適化とは、組織内で利用されているすべてのSaaSアプリケーションを体系的に把握・評価し、業務価値とコストのバランスを最善の状態に整える取り組みです。
単なるコスト削減にとどまらず、セキュリティリスクの低減、管理工数の圧縮、部門間の業務効率化を同時に実現することを目的としています。継続的に最適化を行うことで、組織の成長に合わせて必要なツールだけを適切なコストで維持できる状態が長期的に続きます。

最適化によって期待できる効果は、大きく3つに整理できます。
1つ目はコスト削減です。未使用ライセンスの解約、重複ツールの統合、適正なプランへの変更を組み合わせることで、年間のSaaS支出を大幅に抑えられます。2つ目はセキュリティリスクの低減です。退職者アカウントの残存や管理外のシャドーITは情報漏洩リスクに直結しており、ポートフォリオを整理することでアクセス権限管理の精度が一段と高まります。3つ目は管理工数の削減です。ツール数が適正化されると、情シスが対応すべきサポート件数や契約管理の手間が減り、より付加価値の高い業務に時間を充てられるようになります。
最適化を後回しにしていると、どのようなリスクが現実のものになるのか。代表的な課題を整理します。
月額課金のSaaSは、解約を忘れるだけで費用が発生し続けます。プロジェクト終了後に使われなくなったツール、退職者に付与されたままのライセンス、トライアルから正式契約に切り替わったものの実際には活用されていないサービスなど、見落としやすいコストが静かに積み上がっていきます。
従業員1人あたりが利用するSaaSの数や支出は年々増加傾向にあるとされ、従業員数が多い企業ほどSaaSへの総支出は大きくなります。このうち一定割合は適切な管理によって削減できる余地があり、コスト最適化のインパクトは想像以上に大きくなりがちです。
管理対象外のSaaSが増えると、どのデータがどこに保存されているかを把握できなくなります。退職した従業員のアカウントが有効なまま残っていれば、不正アクセスの経路になりかねません。AIツールを通じた機密情報の外部流出リスクも近年深刻さを増しており、ポートフォリオ管理の網羅性がセキュリティ水準に直結する構図が鮮明になっています。
SmartHRが情報システム部門を対象に実施した調査では、63.9%が「退職者や異動後のSaaSアカウントを適切に管理できていない」と回答しており、多くの組織に共通する課題となっています。
チャットツールとしてSlackとMicrosoft Teamsが並存している、ファイル共有にBoxとSharePointとGoogle Driveを使い分けているといった状況では、どのツールにどの情報があるかを従業員が把握しきれなくなります。部門ごとに異なるツールを使い続けていると、横断的なプロジェクト管理が困難になり、コミュニケーションコストが膨らんでいきます。
参考:SmartHR、63.9%が退職者や異動後のSaaSアカウントを適切に管理できていないと回答 参考:SaaSスプロール:課題の理解と克服方法
体系的な最適化を実現するために、以下の6つのステップで進めることを推奨します。現状把握から継続的な運用体制の構築まで、段階を踏んで着実に取り組める設計です。

最適化の出発点は、社内で利用されているすべてのSaaSを漏れなく把握することです。棚卸しを進めると「こんなサービスを契約していたのか」という発見が続くケースは少なくなく、把握できていないツールが想像以上に多いことに気づくことも珍しくありません。
棚卸しで収集すべき情報は以下の通りです。
情報収集の方法としては、経費精算データや支払い明細の確認、各部門へのヒアリング、社内ネットワークのトラフィック分析などが有効です。SaaS管理ツールを導入している場合は、自動検出機能を活用することでシャドーITも含めた網羅的な把握が可能になります。
参考:SaaS棚卸しの進め方|ライセンス費用と管理体制を最適化する手順
棚卸しで収集したデータをもとに、各SaaSの利用状況を評価します。評価の基本指標はアクティブユーザー率と利用頻度です。
30日以上ログインがないアカウントを「未使用」と判定するのが一般的な基準とされています。契約ライセンス数に対してアクティブユーザーが著しく少ない場合は、プランの縮小または解約を検討する対象として優先的にリストアップします。
各SaaSを以下の4つのカテゴリに分類すると、次のアクションが自然と見えてきます。
利用状況の分類が完了したら、コスト面からの分析に移ります。単純に金額が大きいものを削減すればよいわけではなく、業務へのインパクトとコスト削減効果のバランスで優先順位を設けることが大切です。
削減優先度を決める際の判断軸を整理します。

削減優先順位が定まったら、実際の統合・廃止を進めます。部門をまたぐツールの廃止は利用者への影響が大きいため、関係部門との合意形成が欠かせません。
重複ツールの統合を判断する際の基準を整理します。
よくある重複パターンとその統合の方向性を以下にまとめます。
利用頻度・法令対応で1社に絞る
廃止を進める際は、契約更新日を確認して解約手続きのタイミングを逃さないよう注意が必要です。自動更新が設定されているSaaSは、更新日の30〜60日前にアラートを設定しておくと対応漏れを防げます。
コスト削減と並行して、セキュリティ観点からもSaaSポートフォリオを評価します。特に確認すべき項目を挙げます。
シャドーIT(情シスの未承認で導入されたSaaS)の存在も見落とせません。特に生成AIツールは、従業員が個人契約で業務利用しているケースが増えており、機密情報が外部に流出するリスクをはらんでいます。
関連記事:SaaSガバナンスとは|効果的なSaaSガバナンスのガイド
一度最適化を行っても、継続的な管理体制がなければSaaSの乱立は再発します。定期的な棚卸しと新規導入プロセスの整備が、最適状態を長く保つ要です。
継続管理のために整備すべき運用ルールを示します。
新規導入フローを整備することで、野良SaaSの発生を源流で防ぎます。部門からの導入申請に対して情シスが機能の重複確認・セキュリティ評価・コスト妥当性を審査する体制が確立されると、日々の管理負担が大幅に軽減されます。
手動でのスプレッドシート管理と専用のSaaS管理ツールでは、対応できる範囲と精度に明確な違いがあります。組織の規模や管理するSaaS数に応じて、適切な手段を選ぶことが重要です。
管理するSaaS数が少ない初期段階では、スプレッドシートから始めることが現実的な選択です。追加コストがかからず、自組織の業務フローに合わせてカスタマイズできる点がメリットとして挙げられます。
一方で、SaaS数が増えると更新作業の負担が増大し、入力漏れや情報の陳腐化が起きやすくなります。シャドーITの自動検出やログインアクティビティの自動取得には対応できないため、どこかで管理の網羅性に限界が生じます。
SaaS管理ツールを導入する前は、情シス担当者が毎月手動でスプレッドシートを更新し、退職者のアカウント棚卸しに数時間を費やすことが当たり前でした。導入後は、HRシステムと連携して退職者情報が自動的に取り込まれ、関連するSaaSアカウントの無効化フローが自動で起動します。担当者は最終確認だけに集中できる環境が整います。
利用状況の把握も大きく変化します。どのSaaSに何人がアクティブにアクセスしているかをダッシュボードでリアルタイムに確認でき、未使用ライセンスのアラートも自動で届きます。棚卸し作業が自動化されることで、情シス担当者は削減・統合の意思決定と部門調整に集中できる体制が整います。
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JosysはSaaSとITデバイスを一元管理できるプラットフォームで、国内外問わず1,000社以上に導入されています(2026年時点)。SaaSポートフォリオの最適化に特化した機能を備えており、棚卸しから継続的な運用管理まで一貫して対応できます。事例によってはIT工数を最大50%、ITコストを最大75%削減したケースもありますが、効果は個社の状況により異なります。
Josysは350以上のSaaSと連携し(2026年時点)、各アプリケーションの利用状況を自動で収集します。アクティブユーザー数・最終ログイン日・ライセンス使用率をダッシュボード上で一覧把握できるため、未使用ライセンスの特定が大幅に効率化されます。
従来は複数のサービス管理画面を個別に確認していた作業が、Josys上で一元確認できるようになります。最適化の意思決定に必要なデータをすぐに取り出せる状態が、日常的な管理を根本から変えます。
退職者情報がHRシステムから連携されると、Josysは対象者が利用していたすべてのSaaSアカウントをリストアップし、無効化・解約の処理フローを自動で起動します。情シスがサービスごとの管理画面を個別に操作する手間が省け、対応漏れのリスクを大幅に低減できます。
Josys上でSaaSごとの契約コストと利用状況を紐づけて管理できるため、「費用が高い割に利用率が低い」ツールを即座に特定できます。削減シミュレーションの結果を経営層への報告資料としてそのまま活用することも可能で、承認取得のプロセスをスムーズに進められます。

参考:未使用ライセンスの可視化によるSaaS予算の最適化 参考:Sales Marker 導入事例|IT資産の見える化と運用効率化
最適化を進める際に陥りやすい失敗パターンと、その対処法を整理します。事前に把握しておくことで、取り組みをよりスムーズに進められます。
初回の棚卸しは実施したものの、その後の定期更新が行われず、数ヶ月後には情報が陳腐化してしまうケースです。一度だけの棚卸しは、その時点のスナップショットに過ぎません。更新の仕組みを整えなければ、ポートフォリオの最適状態は長続きしません。
定期的な棚卸しを業務カレンダーに組み込み、四半期ごとの定例作業として位置づけることが対策になります。SaaS管理ツールを活用することで、手動更新の負担を減らしながら継続的に最新情報を維持できます。
コスト削減を優先するあまり、利用部門への事前確認や代替案の提示なしにSaaSを廃止しようとすると、現場から強い反発を受けます。業務プロセスに組み込まれているツールが突然使えなくなると、業務継続に支障をきたすリスクが生じます。
廃止・統合の前に必ず利用部門に通知し、移行期間と代替手段を提示することが重要です。情シスが一方的に決定するのではなく、経営層の承認を得た上で段階的に進める体制が求められます。
情シスが把握しているSaaSだけを対象に最適化を進めても、従業員が個人で導入したシャドーITが存在する限り、全体像を正確に把握できているとは言えません。特に生成AIツールや業務効率化ツールは、個人契約による業務利用が増えています。
ネットワークトラフィックの分析やSaaS管理ツールのシャドーIT検出機能を活用し、申告ベースではなく技術的に把握する仕組みを整えることが対策になります。シャドーITを検出した際の対応フローもあわせて定めておくと、発見後の処理がスムーズになります。
SaaSの契約更新日を特定の担当者だけが把握している状態では、担当者の異動や退職時に対応が漏れるリスクがあります。自動更新の設定により、気づかないまま契約が継続するケースも少なくありません。
すべてのSaaS契約情報を台帳で一元管理し、更新日の30〜60日前にアラートが届く仕組みを整備することが基本的な対策です。SaaS管理ツールの契約管理機能を活用すれば、このアラート設定を自動化できます。
SaaSポートフォリオ最適化のKPIと効果測定
最適化の取り組みを継続的に改善するためには、成果を数値で測定することが欠かせません。以下のKPIを設定し、定期的にモニタリングする体制を整えます。
これらのKPIを経営層や事業部門に定期報告することで、情シスの取り組みを組織内で可視化し、継続的な協力を得やすい環境が整います。

取り組みを始めて間もない組織向けに、現実的なロードマップを提示します。一度にすべてを完璧にしようとするのではなく、段階的に精度を高めるアプローチが現場での定着につながります。
まず取り組むべきは、全SaaSの棚卸しと退職者アカウントの回収です。棚卸しには一定の工数が伴いますが、退職者アカウントの回収はすぐに着手でき、かつ削減効果が出やすい施策です。
現状把握が完了したら、重複ツールの統合と新規導入フローの整備を並行して進めます。
基盤が整ったら、管理の自動化と精度向上に取り組みます。
参考:SaaS管理の基本と実践:初心者でもできる可視化と最適化の方法
SaaSポートフォリオの最適化は、一度実施して終わりの取り組みではありません。組織の成長や事業環境の変化に合わせて継続的に見直しを行うことで、長期的な効果が持続します。
棚卸しから利用状況の評価、重複排除、継続管理体制の構築というステップを着実に進めることで、コスト削減・セキュリティリスクの低減・管理工数の圧縮という三つの成果を同時に実現できます。最初から完璧な体制を目指す必要はなく、まず退職者アカウントの回収と主要SaaSの棚卸しから着手し、得られた知見をもとに管理の精度を段階的に高めていくアプローチが、現場での定着を後押しします。
SaaSポートフォリオ管理の具体的な進め方や、Josysによる管理体制構築についてご関心のある方は、以下よりお気軽にご確認ください。
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