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入退社対応の情シス工数削減5ステップ|ワークフロー自動化【2026】

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入退社のたびにアカウント発行・PC設定・ライセンス回収を手作業でこなす現場では、情シスの工数が想像以上に膨らんでいます。1人の入社に半日、退職対応に1日かかるケースは珍しくなく、SaaS数の増加とハイブリッドワーク普及がこの負担をさらに押し上げています。

しかし「どこから手を付ければ削減できるのか」「ツール導入は本当に効果があるのか」という疑問を持つ情シス担当者は多いはずです。実際、入退社対応の効率化は単発の改善ではなく、HRシステム連携・IDaaS・SaaS統合管理を組み合わせた構造的な仕組みで実現します。

本記事では、入退社対応で発生する具体的な工数、削減を阻む3つの構造的課題、自動化のステップ、効率化に役立つツール、典型的な失敗パターン、用語集、よくある質問までを情シス担当者向けに整理しました。年間で数百時間規模の工数削減を実現する道筋として、ぜひお役立てください。

記事の中盤には、どの作業がどこまで自動化できるかを整理した一覧表、入社時の標準ワークフロー表、そのまま運用に使える入退社対応チェックリストを掲載しています。自社の現状と照らし合わせながら読み進めてください。

入退社対応で情シスが抱える業務とは

入退社対応とは、新入社員のシステム利用環境を整える「オンボーディング」と、退職者のアクセス権を停止する「オフボーディング」をあわせた一連の業務を指します。情報システム部門にとっては定常業務の中でも工数比率が高く、SaaS数の増加と共に負担が拡大している領域です。

社員1人あたりの入退社対応にかかる時間は、企業規模やSaaS利用数によって異なりますが、入社時で2〜4時間、退職時で4〜8時間が目安となります。100人規模の組織で年間離職率10%・新規採用10%の場合、合わせて60〜120時間の工数が情シスに発生する計算です。

オンボーディングで発生する具体的な作業

新入社員の入社時には、以下の作業が情シスに集中します。

  • アカウント発行:AD/Entra ID、メール、SSO配下のSaaSすべて
  • 端末準備:業務PC・スマートフォンの初期設定、MDM登録
  • アクセス権付与:部署・職位に応じたフォルダ・SaaSへの権限付与
  • 初期パスワード配布とMFA設定支援
  • 入社初日のサインインサポート

これらは入社日に間に合わせる必要があり、複数人の同時入社時には情シスのリソースが逼迫します。

オフボーディングで発生する具体的な作業

退職者対応では、以下の作業が必要となります。

  • アカウントの即時無効化:AD・SaaS・VPN
  • データ引き継ぎ:メール・ファイルの整理と後任への移管
  • 端末回収・初期化:PC、スマートフォン、ICカード
  • ライセンスの返却・契約見直し
  • 監査証跡の作成・保管

退職対応は入社対応より工数が大きく、漏れが発生するとセキュリティ・コンプライアンスのリスクに直結します。

入退社対応の工数が膨らむ3つの理由

入退社対応の工数は、情シスの努力や勤勉さの問題ではなく、構造的な要因によって膨張します。3つの根本原因を理解することで、有効な対策が見えてきます。

1社あたりのSaaS数の急増

ここ数年、企業1社あたりの利用SaaS数が大幅に増加しています。Productiv社の調査では、平均的な企業で300を超えるSaaSが利用されているとされ、これは10年前の数倍に当たります。SaaSが増えるほど、入退社時に対応すべきアカウント数も比例して増えていくのが実情です。

部署ごとの個別契約とシャドーIT

部署単位で独自に契約するSaaSや、IT部門の許可を得ずに導入される「シャドーIT」が広がっています。これらは情シスの管理外にあるため、入退社対応のたびにヒアリングと棚卸しが必要となり、工数増加の大きな要因となります。

手作業による属人化

多くの企業では、入退社対応がエクセルのチェックリストとメールでの依頼で運用されています。担当者の経験と勘に頼る属人的な運用は、ミスと漏れを生む温床となるだけでなく、対応スピードのばらつきも引き起こします。

入退社対応に限らず情シス業務全体の工数構造を見直したい場合は、業務の棚卸しから着手する方法を整理した情シスの工数削減もあわせてご覧ください。

入退社対応の工数を測る指標

工数削減に取り組む前に、現状を定量的に把握することが重要です。情シスの入退社対応を評価する代表的な指標を紹介します。

1人あたり処理時間(MTTP:Mean Time To Process)

入社・退職それぞれの対応にかかる平均時間を計測します。手作業中心の企業では入社2〜4時間、退職4〜8時間ですが、自動化が進んだ企業では入社30分以下、退職15分以下まで短縮されているケースもあります。

完了率と漏れ件数

「退職日までに必要な作業が何件完了したか」「漏れた作業は何件あったか」をモニタリングします。漏れが発生したアカウントは情報漏洩リスクとなるため、ゼロを目指す指標として運用します。

漏れ件数を継続的にゼロへ近づけるには、四半期ごとの権限レビューとセットで運用することが有効です。手順はアクセス権限の棚卸し方法で解説しています。

ライセンス無駄遣い率

退職者の未削除アカウントに支払い続けているSaaSライセンス費用を計測します。Gartnerの指摘では、最大30%のライセンスが未使用または低利用状態にあるとされており、入退社対応の遅れが直接コスト増につながります。

SLA(合意した対応期限)達成率

「入社日にすべてのアカウントが使える状態になっている」「退職日に全アカウントが無効化されている」というSLAを設定し、達成率をモニタリングします。

工数削減を実現する4つのアプローチ

入退社対応の工数を削減するには、単発の改善ではなく構造的な仕組みづくりが必要です。効果が大きい4つのアプローチを紹介します。

アプローチ1:HRシステムを起点にした自動化

HRシステム(SmartHR、freee、Workdayなど)を入退社情報の起点とし、新入社員・退職者のデータが自動でIDaaSやSaaSに連携される仕組みを作ります。これにより、情シスへの依頼や手作業のチェックが大幅に削減されます。

アプローチ2:IDaaS/SSOによる一元化

IDaaSを導入し、SaaSアカウントの発行・削除を統一インターフェースで管理します。1つのアカウント操作が複数のSaaSに連動するため、対応工数が劇的に減少します。Okta、Microsoft Entra ID、OneLoginなどが代表的なIDaaSです。

アプローチ3:SaaS統合管理プラットフォームの導入

IDaaSではカバーできないSaaSや個別ライセンス管理を補完するため、SaaS統合管理プラットフォーム(SMP:SaaS Management Platform)を導入します。350以上のSaaSと連携し、利用状況・ライセンス・アカウントを一元管理することで、退職時のライセンス回収やシャドーIT検知も自動化されます。

アプローチ4:プロセス標準化とワークフロー設計

入退社対応のプロセスをドキュメント化し、ワークフローツール(ServiceNow、Jira Service Managementなど)でタスク化します。誰が・何を・いつまでに行うかが可視化され、属人化と漏れを防げます。

入退社手続きはどこまで自動化できるか

入退社手続きの自動化を検討するとき、最初に確認すべきは「どの作業が自動化でき、どの作業が人手として残るか」の線引きです。ここを曖昧にしたままツールを選定すると、期待した工数削減が得られず「導入したのに楽にならない」という結果になります。個別SaaSのアカウント払い出しについては、入退社のSaaSアカウント自動化でも仕組みとツールを整理しています。

入退社対応で発生する代表的な作業を、自動化の可否と実現方法で整理すると次のようになります。

作業 自動化の可否 実現方法
SSO配下SaaSのアカウント発行・削除 ほぼ完全に自動化できる HRシステム起点のIDaaS連携(SCIM)
SSO非対応SaaSのアカウント操作 条件付きで自動化できる SaaS統合管理プラットフォームのAPI連携・ノーコードワークフロー
部署・職位に応じた権限付与 ルール化すれば自動化できる ロール定義に基づく自動割当と例外時のみ承認
ライセンスの回収・棚卸し 自動化と定期レビューの併用 利用状況の自動集計と未使用ライセンスの検知
端末のキッティング・配送 部分的に自動化できる MDMのゼロタッチ登録+キッティングの外部委託
端末の回収・初期化 進捗管理のみ自動化できる 回収ステータスは自動追跡、物理作業は人手
データ引き継ぎの範囲判断 自動化できない 上長・後任の判断が必要。承認フローで統制する
例外的な権限申請の審査 自動化できない 申請と証跡の記録だけを自動化する

この整理から見えてくるのは、アカウントと権限に関わる作業の大半は自動化できる一方で、物理的な作業と人の判断は残るという事実です。したがって工数削減の目標は「ゼロにする」ことではなく、「手を動かす仕事を、仕組みを監視する仕事に置き換える」ことに置くのが現実的です。

自動化の前提になる3つの条件

自動化を機能させるには、ツール導入の前に次の3条件を満たしておく必要があります。いずれかが欠けていると、自動化は途中で人の確認を挟むことになり、効果が半減します。

  • 入退社情報の起点が1つに定まっていること。人事とIT部門で入社日や部署の情報がずれていると、自動処理は誤ったデータのまま実行されます
  • SaaSと権限の台帳が最新であること。台帳に載っていないSaaSは自動化の対象にできず、退職時の削除漏れとして残り続けます
  • 承認フローが明文化されていること。「誰の承認があれば権限を付与してよいか」が決まっていない状態では、条件分岐を設計できません

自動化しても人の判断が残る領域

退職者のメールボックスやファイルをどこまで後任に引き継ぐか、在職中に付与した例外権限を継続するかといった判断は、業務内容を知る上長でなければ決められません。この領域を無理に自動化しようとすると、必要なデータを消してしまう事故や、逆に不要な権限が残り続ける状態を招きます。

現実的な設計は、判断そのものは人に残し、判断を求めるタイミングと記録を自動化することです。退職日の10営業日前に上長へ確認依頼が自動で飛び、回答が証跡として保存される仕組みがあれば、情シスの督促工数はほぼ消えます。

入退社対応の情シスワークフローを設計する

情シスのワークフローとは、入退社の依頼が発生してから完了するまでの流れを、担当者・期限・承認・アウトプットの単位で定義したものです。ツールを入れれば整うものではなく、先に紙の上で設計しておく必要があります。設計が曖昧なままツール化すると、属人的な運用がそのままシステムに写し取られるだけになります。

入社対応の標準ワークフローは、次のように段階ごとの期限とアウトプットを決めておくと運用に乗ります。

段階 起点・担当 期限の目安 アウトプット
1. 入社情報の登録 人事(HRシステム) 入社14日前 氏名・部署・職位・入社日・雇用区分
2. 権限セットの確定 配属先の上長が承認 入社10日前 付与するロールと対象SaaSの一覧
3. 端末の手配 情シスまたはキッティング代行 入社7日前 資産番号付き・MDM登録済みの端末
4. アカウントの自動払い出し IDaaS/SaaS統合管理 入社3日前 主要SaaSのアカウントとMFA設定
5. 初日のサインイン支援 情シス 入社当日 ログイン完了記録と例外対応の記録
6. 完了確認 情シス 入社3営業日後 想定した権限との差分がゼロである記録

重要なのは、段階2の「権限セットの確定」を上長の承認事項として明示している点です。ここが依頼メールの文面任せになっていると、情シスが部署ごとの慣習を推測して権限を付与することになり、属人化と過剰付与の両方を生みます。

退職側のワークフローは日付ではなく時刻で設計する

入社対応が「入社日までに間に合えばよい」のに対し、退職対応は「いつ止めるか」の精度が問われます。退職日の終業時刻なのか、最終出社日の退館時と同時なのか、有給消化に入った時点なのかによって、必要な作業の並びが変わります。

そのため退職側のワークフローでは、無効化の基準時刻を人事と合意し、その時刻を起点に逆算した工程表を作ります。合意がないまま運用すると「まだ在籍扱いなのでアカウントは止められない」という理由で削除が先送りされ、退職者アカウントの放置につながります。具体的な削除手順とリスクは退職者アカウント削除の方法で詳しく解説しています。

ワークフローツールを導入する前に決めておくこと

ServiceNowやJira Service Managementなどのワークフローツールは強力ですが、決めるべきことを決めないまま導入すると設定作業自体が新たな工数になります。導入前に最低限確定させておきたいのは次の4点です。

  • 承認者は誰か。部署の上長か、部門長か、情シス側の管理者かを役職ではなく役割で定義します
  • 例外はどう扱うか。標準の権限セットに含まれないSaaSを申請された場合の判断者と期限を決めます
  • SLAは何時間か。入社準備と退職時の無効化それぞれに、達成を測れる時間を設定します
  • 証跡は何を残すか。監査で問われる「誰がいつ何を承認したか」を、後から検索できる形で保存します

この4点が決まっていれば、ツールの設定は設計図をなぞる作業になります。逆に決まっていない状態では、ツール上で議論を始めることになり、導入プロジェクトが長期化します。

人事部門とのドキュメント連携を自動化する

入退社対応の起点は、ほぼ例外なく人事部門にあります。情シス側だけを自動化しても、人事から届く情報がExcelの申請書やチャットの依頼文のままでは、入口で人が読み取って転記する工数が残ります。オンボーディングに関わるドキュメントの自動化とは、書類作成を速くすることではなく、書類を機械が読める情報に置き換えることです。

依頼ドキュメントを構造化データに置き換える

申請書やチャット依頼の問題は、書式が自由なことです。同じ「営業部の中途入社」でも、書き手によって職位の表現も入社日の書式も揃いません。この揺れが自動処理を阻む最大の要因です。

対策は、依頼の入口をフォームに一本化し、部署・職位・雇用区分・入社日を選択式の項目として持たせることです。自由記述は備考欄だけに限定します。入力された内容がそのままHRシステムのレコードになれば、情シスは転記作業から解放され、内容の妥当性確認だけに集中できます。

HRシステムを唯一の起点にする

構造化された情報が集まったら、次はそれを唯一の起点として扱う運用に切り替えます。入社日が変更されたとき、更新する場所がHRシステムの1箇所だけであれば、そこから先の連携はすべて自動で追随します。逆にHRシステムと情シスの台帳を二重に持っていると、どちらが正しいかを人が判断する工数が残ります。

HRシステムから各SaaSへの連携には、ユーザー情報の同期を標準化した仕組みが使われます。仕組みの詳細はSCIMとはで解説していますが、実務上の要点は「人事が更新した情報が、情シスの操作なしに各SaaSへ届く経路を1本作る」ことに尽きます。

人事側の運用ルールも同時に変える

連携の仕組みを作っても、人事側の運用が変わらなければ効果は限定的です。入社2日前に部署が確定する、退職の連絡が最終出社日の当日に届くといった状態では、どれだけ自動化しても情シスは例外対応に追われます。

そこで、システム連携の設計と同時に「入社14日前までに配属を確定する」「退職の意思確認から3営業日以内にHRシステムへ登録する」といった情報提供の期限を人事と合意します。技術ではなく運用の取り決めですが、自動化の効果を左右するため、プロジェクトの初期に握っておくべき項目です。

入退社対応の効率化を支えるツール

工数削減を実現するためには、適切なツールの組み合わせが鍵となります。代表的な6製品・カテゴリを紹介します。

SmartHR

SmartHRは、国内導入実績の高いクラウド人事労務ソフトです。入退社情報を一元管理し、APIや連携サービスを通じてIDaaSやSaaS統合管理ツールにデータを送れます。日本企業のHRシステム連携の起点として広く採用されています。

Microsoft Entra ID(旧Azure AD)

Microsoft Entra IDは、Microsoft 365を含む幅広いSaaSと統合できるクラウドIDaaSです。HRシステム連携によるアカウント自動払い出し・削除、ロールベースのアクセス制御、MFAなどを標準機能として提供します。Microsoftエコシステムを使う企業の自然な選択肢です。

Okta

Oktaは、IDaaS市場のリーダーで、8,000以上のSaaSと連携実績を持ちます。Workflowsという自動化機能を備え、入退社時の複雑なフローを柔軟に組めます。グローバル展開する大企業や、SaaS数の多い企業に適しています。

ServiceNow

ServiceNowは、ITサービス管理(ITSM)プラットフォームで、入退社対応のワークフロー管理に活用されます。HR・情シス・上長の連携を可視化し、SLA管理や監査証跡の保管を実現します。大企業の標準ツールとして導入実績があります。

Jira Service Management

Jira Service Managementは、Atlassian社が提供するITSMで、Jira Softwareとの連携と柔軟なワークフロー設定が特徴です。中堅企業の入退社管理プラットフォームとして導入が進んでいます。

ジョーシス

ジョーシスは、企業内の認証情報を統合管理するAI駆動のアイデンティティセキュリティ基盤で、入退社対応の自動化に必要な機能を備えます。HRシステム連携・IDaaS連携・350以上のSaaSとのアプリ連携により、入社時のアカウント自動払い出しから退職時の一括削除まで、ノーコードで実現します。中堅〜大企業のSaaS統合管理に最適化された設計です。

工数削減プロジェクトの進め方

入退社対応の工数削減プロジェクトは、計画と段階的な実装が成功の鍵です。5つのステップで進めることを推奨します。

ステップ1:現状の棚卸しと工数測定

まず、入退社1件あたりの工数を測定します。実際の対応時間・対応SaaS数・漏れ件数を1か月程度ログ化し、改善の出発点とします。同時に、社内で利用されているSaaSの一覧と、各SaaSの管理者を整理します。

ステップ2:標準プロセスの設計

入退社時のチェックリストとワークフローを文書化します。誰が・何を・いつまでに行うかをタスク化し、属人化を排除します。この時点でHR・情シス・上長の役割分担を明確にすることが重要です。

ステップ3:IDaaSとSaaS統合管理の導入

IDaaSとSaaS統合管理プラットフォームを選定・導入します。PoCで複数製品を評価し、自社のSaaS環境との連携性・運用性を確認します。導入は段階的に進め、最初は主要SaaS(メール・ファイル共有・コミュニケーション)から自動化していきます。

ステップ4:HRシステム連携の構築

HRシステムから入退社情報を自動取得する連携を構築します。APIやSCIM連携を活用し、HR起点で全社のアカウント発行・削除が動く仕組みを作ります。これにより、情シスは個別の依頼処理から解放され、運用監視に集中できるようになります。

ステップ5:継続改善とKPIモニタリング

導入後はKPI(処理時間、漏れ件数、ライセンス無駄遣い率)を定期モニタリングし、四半期ごとに改善を行います。新たに導入されるSaaSがあれば連携対象に追加し、退職時に漏れが発生したアカウントの根本原因を分析・対策する運用を定着させます。

入退社対応チェックリスト

ステップ2の標準プロセス設計では、次のチェックリストを土台にすると議論が進みます。自社で使っていないSaaSやデバイスの項目は削り、必要な項目を足して運用してください。

オンボーディング(入社時)

  • 人事から入社情報(部署・職位・入社日・雇用区分)を受領した
  • 配属先の上長から権限セットの承認を得た
  • 端末を手配し、MDM登録と資産台帳への登録を完了した
  • ディレクトリサービスのアカウントを発行した
  • 標準SaaSのアカウントを払い出し、MFAを有効化した
  • 共有フォルダ・社内システムのアクセス権を付与した
  • 入社初日のサインインを確認し、例外対応を記録した
  • 入社3営業日後に、想定した権限との差分がないことを確認した

オフボーディング(退職時)

  • 人事から退職日と最終出社日、無効化の基準時刻を受領した
  • 上長にデータ引き継ぎ範囲を確認し、回答を証跡として保存した
  • ディレクトリサービスのアカウントを無効化した
  • SSO配下および個別契約SaaSのアカウントを停止・削除した
  • VPN・リモートアクセス・特権アカウントを停止した
  • 端末とICカードを回収し、初期化と資産台帳の更新を完了した
  • 有償ライセンスを返却し、次回更新時の契約数に反映した
  • 削除・無効化の実施記録を監査証跡として保管した

よくある失敗パターンと対策

工数削減プロジェクトには典型的な失敗パターンがあります。事前に把握し対策することで、投資対効果を最大化できます。

ツール導入だけで満足してしまう

IDaaSやSaaS統合管理を導入しても、HRシステム連携やワークフロー設計を怠ると効果が限定的になります。ツールはあくまで仕組みの一部であり、プロセス全体の標準化と組み合わせて初めて成果を生みます。

シャドーIT対応を後回しにする

部署独自のSaaSや個人契約のサービスを管理対象外にすると、入退社時の漏れが発生し続けます。SaaS可視化機能を活用してシャドーITを発見し、計画的に統合管理対象に組み込んでいくべきです。

段階導入を怠り全社一斉に切り替える

すべてのSaaSと部署を一気に新運用に移行しようとすると、現場の混乱と移行ミスを招きます。重要度の高いSaaS(メール、ファイル共有、IDaaS起点アプリ)から段階的に移行する計画が現実的です。

KPI測定を怠る

「導入してよかったね」で終わると、改善が止まります。処理時間・漏れ件数・コスト削減額などを継続的にモニタリングし、半期ごとに経営層に報告する運用を定着させましょう。

入退社対応の工数を削減した企業の事例

自動化の効果は、実際に取り組んだ企業の変化を見るのがもっとも具体的です。公開されている3社の事例を、導入前の状態と導入後の変化に分けて紹介します。

株式会社Sales Marker:退職者アカウントの削除遅れを解消し情シス業務時間を約50%削減

Sales Markerは、急成長にともない月12名以上のペースで従業員が増加していました。スプレッドシートでの手動管理は限界に達し、誰がどのアプリを使っているかを把握できない状態が続きます。結果として退職者のアカウント削除対応が遅れ、セキュリティリスクが高まっていました。

ジョーシスの導入後は、アプリとデバイスの保有状況が可視化され、棚卸し業務の時間が大幅に短縮されました。情シスの業務時間は約50%削減され、入力誤りへのプレッシャーからも解放されています。

クラスター株式会社:年間100名以上の増員に耐えるアカウント運用へ

クラスターでは、年間100名以上という急激な従業員増加に対し、スプレッドシートによるアカウント管理が追いつかない状態でした。各部署が分散して管理していたため全体像が把握できず、SaaSアカウントの削除遅延や抜け漏れ、ITデバイスの返却・再配置の管理難といった課題が重なっていました。

導入後はSaaSアカウント情報が一元化され、更新の抜け漏れが抑制されました。ITデバイスの保有状況も瞬時に把握できるようになり、各部署への確認作業が不要になっています。管理コストの削減により、本来取り組むべき業務の時間を創出できたと報告されています。

Ankerグループ:デバイス調達とSaaS管理の統合でITコストを最大75%削減

Ankerグループでは、デバイスの調達・設定・SaaS管理が別々の流れで動いており、入社準備のたびに複数の窓口とやり取りが発生していました。ジョーシスの活用により調達から設定、SaaS管理までをシームレスにつなぎ、ITコストを最大75%削減しています。

3社に共通しているのは、個別作業を速くしたのではなく、管理の起点を1つにまとめた点です。端末調達までを含めた一連の流れを同じ仕組みに載せるほど、削減効果は大きくなります。

参考:Sales Marker 導入事例 

参考:クラスター株式会社 導入事例 

参考:Ankerグループ 導入事例

入退社対応関連の重要用語集

工数削減プロジェクトで頻出する6つの専門用語を整理します。

オンボーディング/オフボーディング

オンボーディングは入社時のシステム整備、オフボーディングは退職時のアクセス停止を指します。両者を合わせて「ID Lifecycle Management(IDライフサイクル管理)」と呼び、IGAやIDaaSの中核機能として位置づけられます。

プロビジョニング/デプロビジョニング

プロビジョニングはアカウントの自動払い出し、デプロビジョニングは自動削除を指します。SCIM(System for Cross-domain Identity Management)プロトコルを使った連携が標準で、HRシステムから各SaaSへの自動連携を実現します。

IDaaS(Identity as a Service)

IDaaSは、クラウド型のID管理サービスで、SSO・MFA・プロビジョニング機能を提供します。Okta、Microsoft Entra ID、OneLoginが代表的で、複数SaaSのアカウント管理を一元化します。

SaaS統合管理プラットフォーム(SMP)

SMPは、SaaSの利用状況・アカウント・ライセンス・コストを一元管理するプラットフォームです。IDaaSと補完関係にあり、IDaaSがカバーしないSaaSや個別契約のサービスもまとめて管理できます。

SCIM

SCIMは、SaaS間のユーザー情報同期を行う標準プロトコルです。HRシステムが入退社を検知すると、SCIMを介して各SaaSにアカウント発行・削除指示が自動送信され、人手を介さずに処理が完了します。

ITSM(IT Service Management)

ITSMは、ITサービスの提供と運用を体系化するフレームワークです。ServiceNow、Jira Service Management、Freshserviceなどが代表的なツールで、入退社対応のワークフロー管理にも活用されます。

入退社対応の工数削減はSaaS統合管理が決定打

ここまで述べた工数削減の仕組みは、IDaaSとSaaS統合管理プラットフォームの組み合わせで初めて完成します。特に「個別SaaSの管理」「ライセンス回収」「シャドーITの可視化」という3点は、IDaaS単体では十分にカバーできない領域です。

SaaS統合管理が解決する3つの領域

  • 個別SaaSの管理:IDaaSで連携できないSaaSも含めた一元管理
  • ライセンス回収の自動化:退職時の不要ライセンスを即時返却
  • シャドーITの可視化:管理外のSaaSを発見し、ガバナンス対象に組み込む

これらが揃って初めて、入退社対応の工数削減と漏れゼロを両立できます。

ジョーシスで実現する入退社対応の自動化

ジョーシスは、企業内の認証情報を統合管理するAI駆動のアイデンティティセキュリティ基盤として、HRシステム連携・IDaaS連携・350以上のSaaSとのアプリ連携を提供します。入社時のアカウント自動払い出しから退職時の一括削除まで、ノーコードで自動化することで、IT工数を最大50%削減し、ITコストを最大75%削減した導入実績があります。国内外1,000社以上のお客様にご採用いただいているジョーシスのプラットフォームは、入退社対応の自動化に必要な機能をワンストップで提供します。

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入退社対応の工数削減に関するよくある質問

実務担当者からよく寄せられる質問を4つ取り上げます。

Q1. 工数削減はどのくらいの期間で効果が出ますか

A. 段階的に効果が現れます。プロセス標準化で1〜2か月、IDaaS導入で3〜6か月、HRシステム連携完了後で6〜12か月の時点で大きな削減効果を実感できる企業が多くあります。最初の3か月は移行作業で逆に工数が増える期間もあるため、長期視点で評価することが重要です。

Q2. 中小企業でもIDaaS/SaaS統合管理は必要ですか

A. SaaS数が30を超えるあたりから、手作業による管理は限界を迎えます。中小企業でも、Microsoft 365やGoogle Workspaceに付属する基本機能から始め、SaaS数の増加に応じて専門ツールに段階的に移行する道筋が現実的です。

Q3. ツール導入の費用対効果はどう測ればよいですか

A. 「削減できた情シス工数の人件費」と「回収できたライセンス費用」の合計をROIとして算出します。多くの企業で導入1年目からツール費用を上回る効果が出ており、複数年にわたり導入コストを大きく上回る効果を得た事例も報告されています。

Q4. ノーコードで自動化できるツールはありますか

A. 主要なIDaaS(Okta Workflows、Microsoft Power Automate)やSaaS統合管理プラットフォーム(ジョーシスなど)は、ノーコードで複雑な自動化フローを設計できます。情シスにエンジニアがいない企業でも、ローコード/ノーコードツールを活用すれば自動化を進められます。

Q5. 入退社手続きの自動化はどこから着手すべきですか

A. 最初に着手すべきは、全社員が使う主要SaaS(メール・ファイル共有・チャット)のアカウント発行と削除です。対象人数が多く手順も定型化しやすいため、投じた設計工数に対する回収が最も早くなります。ここで型を作ってから部署固有のSaaSへ範囲を広げてください。例外の多い部署固有SaaSから始めると条件分岐が複雑になり、プロジェクトが停滞しやすくなります。

Q6. 情シスのワークフローはどこまで文書化すべきですか

A. 少なくとも「担当者」「期限」「承認者」「アウトプット」の4項目は、入社・退職それぞれの段階ごとに文書化してください。この4項目が揃っていれば、担当者が交代しても同じ品質で運用できます。一方で、個別SaaSの操作手順まで細かく文書化すると、SaaS側のUI変更のたびに更新工数が発生します。手順は自動化に寄せ、文書には流れと責任の所在を残すという切り分けが有効です。

まとめ:入退社対応の工数削減は構造改革で実現する

入退社対応の工数削減は、情シスの単発改善ではなく、HRシステム・IDaaS・SaaS統合管理を組み合わせた構造的な仕組みづくりで実現します。SaaS数の急増と働き方の多様化が進む現代では、手作業中心の運用は限界を迎えており、自動化への移行は避けて通れない経営課題となっています。

工数削減プロジェクトを成功させるには、現状の定量把握、プロセス標準化、ツール導入、HRシステム連携、KPIモニタリングという5つのステップを段階的に実行することが重要です。短期的な負担はあっても、半年から1年で大幅な工数削減効果が現れ、情シスがより戦略的な業務に時間を割けるようになります。

本記事で整理したとおり、自動化できる範囲とできない範囲を先に線引きし、ワークフローと人事との情報連携を設計しておけば、ツールの効果は設計図どおりに出ます。まずは自社の入退社1件あたりの工数を1か月測るところから着手してください。

ジョーシスのようなSaaS統合管理プラットフォームを活用すれば、入退社対応の自動化と全社のSaaSガバナンスを同時に実現できます。情シスの工数削減を経営課題と捉える企業にとって、SaaS統合管理は次の標準インフラとなるはずです。

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