
情シス部門の人手不足は、ここ数年で多くの中堅企業(従業員300〜2,000名規模・情シス数名体制)が直面する深刻な課題です。SaaS増加、リモートワーク定着、DX推進、生成AI活用、コンプライアンス強化など、業務領域が急拡大する一方、採用市場では情シス人材の確保が極めて困難な状況が続いています。
人手不足の解決を「採用増員」だけで進めると、多くの場合うまくいきません。市場の人材供給が需要に追いついていない構造的な問題があり、根本的な解決には業務プロセス・ツール基盤・組織設計の見直しが不可欠です。
この記事でわかること: 業務棚卸し→定型業務の削減→標準化→外部委託→戦略採用という5段階の優先順位と、中堅企業の現場で実行できる具体的施策を解説します。
対象読者は、情シス部門責任者、人事責任者、経営層、人手不足の中で品質維持を求められる現場担当者、IT人材戦略を立案する経営企画担当者です。

情シス人材不足は日本全体で進行する課題ですが、中堅企業では特に深刻です。大企業のような人事戦略リソースもなく、スタートアップのような魅力的な技術環境も用意できないなかで、人材獲得競争に挑む構造的なハンディキャップがあります。
問題の全体像を理解することが、解決策設計の出発点です。「人が足りない」という症状の裏にある複数の要因に向き合う必要があります。
クラウドサービス導入が部門単位で進み、組織内SaaS数は数十〜百以上に達するケースが一般的です。各SaaSのアカウント発行、ライセンス管理、利用状況確認、契約更新などのタスクが、SaaS数に比例して増加します。
リモートワーク、ゼロトラスト化、生成AI活用、コンプライアンス強化など、新たな業務領域も継続的に追加されます。業務量増加に対して人員増は追いついていません。
情シス人材、特にクラウド・セキュリティ・DX推進の経験を持つ人材は、採用市場で極めて希少です。中堅企業の採用予算では、大企業や外資系企業との競争で勝つのが困難です。
採用に1人あたり100〜300万円の紹介手数料、年収提示の引き上げ、入社後の定着支援などが必要で、結果的に高コストです。
ベテラン情シス担当者に業務が集中し、ノウハウが個人に蓄積した状態が続きます。引継ぎ困難、休暇取得困難、退職リスクという三重の問題を抱えます。
属人化は短期的には効率的に見えても、長期的には組織の脆弱性を増幅させます。
DX推進、生成AI活用、ゼロトラスト化など、経営から期待される戦略業務がある一方、日常運用に追われて手が出せない状態が続きます。情シス担当者の「やりがいの欠如」につながり、離職リスクも高めます。
業務負荷の高さ、キャリアパス不明確、待遇面での競合他社との差により、コア人材が他社へ流出するリスクが常に存在します。一人の退職が組織全体の業務継続を揺るがすこともあります。
情シス人手不足の解決は、採用の前に「業務量削減」と「業務効率化」を進めることが基本原則です。これを飛ばして採用に走ると、業務の属人化と離職リスクをさらに悪化させやすくなります。
中堅企業向けに、解決アプローチの優先順位を整理します。短期施策と中長期施策を組み合わせて、構造的な改善を進めます。

ツール導入による定型業務の自動化、業務プロセスの見直し、不要業務の廃止などで、絶対的な業務量を減らします。同じ人員でも、業務量が減ればキャパシティに余裕が生まれます。
特にID管理、SaaS管理、台帳更新、問い合わせ対応など、自動化適性の高い領域から着手します。
業務手順書、ナレッジベース、FAQの整備により、特定担当者依存から組織知への移行を進めます。引継ぎ可能、休暇取得可能、複数担当によるバックアップ可能な体制に転換します。
属人化解消は、採用後の即戦力化を促進する効果もあります。
社内では対応困難な専門領域、突発業務、季節性の高い業務を、外部リソース(情シスBPO、SaaSベンダー支援、コンサルティング)で補完します。
固定費としての人件費を、変動費としての委託費に置き換えることで、業務量の変動に柔軟に対応できます。
ノーコード/ローコードツールを活用した現場主導の内製化を推進します。情シスは「すべてを自分でやる」役割から、「現場が自走できる基盤を提供する」役割へ転換します。
CoE(Center of Excellence)設置、ガイドライン策定、教育体制整備などが、内製化推進の前提です。
業務量削減・効率化・分業を進めたうえで、必要なポジションに必要な人材を採用します。「とりあえず1人増やす」のではなく、組織全体の最適化を踏まえた戦略的採用を実行します。
採用後の定着のため、キャリアパス設計、待遇改善、業務裁量権の付与などを並行で進めます。
人手不足解消は一夜では達成できません。下表を社内稟議・上長説明の骨格として活用してください。
情シス人手不足の中核的な解決策である業務量削減について、効果の高い6施策を整理します。これらは中堅企業で共通する業務領域で、削減手法も確立されています。
これらの施策を組み合わせることで、業務総量の大幅削減が現実的に達成できます(規模・ツール選定により効果は異なります)。
入社・異動・退職時のアカウント発行・変更・停止を自動化します。人事システムと連携することで、人事側の操作をトリガーに連携対象のSaaSに対してアカウント処理を自動実行できます。
月の手作業工数を大幅に削減できる領域です(削減幅は管理対象SaaS数や運用規模により異なります)。同時にセキュリティ品質も向上し、退職者アカウント残存のリスクを解消できます。
組織内SaaSの利用状況、ライセンス、契約情報を統合可視化します。Excel手動管理では多くの工数を消費する作業を、自動化により大幅削減できます。
未使用ライセンスの特定によるコスト削減効果も同時に得られ、投資回収期間を短縮できます。
FAQボット、ナレッジベース、セルフサービスポータルを整備し、定型問い合わせの自動応答を実現します。アカウントロック解除、パスワードリセットなどはユーザ自身で解決可能です。
問い合わせ対応工数の削減に有効で、情シスは複雑な技術課題に集中できます。
入退社申請、デバイス貸出申請、ライセンス申請などをノーコードツール(kintone、Slack、Microsoft Power Apps、Workatoなど)で電子化します。紙やExcelベースの申請から、クリック完結への移行で工数削減を実現します。
操作ログ、アクセス変更履歴、特権操作記録などの監査証跡を自動取得し、監査時のレポート出力を自動化します。年次審査の準備期間を大幅短縮できます。
ライセンス更新、定期メンテナンス、棚卸し、レポート作成などの定例タスクを、スケジューラ・ワークフローツール・bot連携で自動化します。
外部リソース活用は、中堅企業の人手不足解決における重要な選択肢です。固定費を変動費に置き換える設計と、社内人材を戦略業務に集中させる設計の両面で効果があります。
中堅企業で活用される3つのパターンを整理します。それぞれメリット・デメリットがあり、業務特性に応じて選択します。
情シス業務全般または特定業務を、専門ベンダーに委託する形態です。ヘルプデスク、運用業務、ベンダー対応、設備管理などが代表的な委託対象です。
固定費削減、専門性活用などのメリットがあります。一方、社内ナレッジ蓄積の機会が減るリスク、SLA・情報セキュリティ・内製知見の喪失なども考慮が必要です。戦略業務は社内保持する設計が必要です。なお、対応時間(営業時間外・休日対応)はサービスにより異なるため、選定時にSLA要件を確認してください。
特定プロジェクト(ISMS取得、システム移行、生成AI導入など)でスポット的に外部支援を活用するパターンです。プロジェクト完了で終了するため、固定費化を避けられます。
専門性が必要、社内に該当スキルが不足、短期で成果を出す必要がある領域に向きます。
SaaSベンダーが提供する導入・運用支援サービスを活用するパターンです。SaaS製品のオンボーディング、活用促進、トラブル対応をベンダーが直接担います。
SaaS活用度を高めながら、内製人材の負荷を抑えられます。ベンダーロックインのリスクは留意が必要です。
中堅企業では、これら3パターンを組み合わせる設計が標準的です。コア業務は社内、専門領域はスポット支援、定型運用はBPOという分担で、最適化を図ります。
情シス部門の組織機能を、人手不足を踏まえて再設計することも重要です。「すべてを自分でやる情シス」から「組織全体のIT活用を支援する情シス」への転換が、中長期的な解決策になります。
中堅企業では、組織機能の再設計が経営課題として位置づけられるケースが増えています。
ITガバナンス、セキュリティポリシー策定、システム企画、ベンダー戦略などのコア機能と、日常運用、ヘルプデスク、定型タスクなどの非コア機能を切り分けます。
コア機能は社内で強化し、非コア機能は自動化・外部委託で軽量化する設計が現実解です。
ノーコード推進、生成AI活用、データ活用などの新領域でCoEを設置し、情シスが現場の自走を支援する体制を作ります。「情シス対現場」の対立構造から、「情シスと現場のパートナーシップ」への転換を促します。
中堅企業では2〜5名程度の兼任CoEから始めるのが現実的です。
情シス担当者ごとに役割と責任を明確化し、業務の重複・空白を排除します。属人化解消、引継ぎ容易化、評価軸の明確化などのメリットが生まれます。
ジョブディスクリプション、責任範囲、評価指標を文書化し、定期レビューで見直します。
情シス部門でのキャリアパス(運用→企画→管理職、技術専門職)を設計し、人材定着を促します。組織内ローテーション、外部研修、資格取得支援などを組み合わせます。
人材育成への投資が、結果的に採用コストの抑制と組織力向上につながります。
上記の業務削減施策のうち、SaaS可視化・IDライフサイクル管理・アクセスレビュー・監査対応記録の領域は、統合プラットフォームで効率化できます。情シス人手不足の構造的解決には、個別ツールの横断管理より、IT資産・SaaS・ID・アクセス権を一元管理できる基盤が現実的です。
中堅企業の情シスでは、限られた人員で増加する業務に対応する必要があり、個別ツールの導入では運用が分散します。統合プラットフォームによる構造的な解決が現実解です。

ジョーシスは350以上のSaaSと連携し、人事システムからの入社・異動・退職情報をトリガーに、連携対象のSaaSに対してアカウント処理を自動実行します。手作業を大幅に削減できます。
退職者アカウント残存、入社時の即日アカウント発行、異動時の権限変更漏れなど、手作業運用での課題を構造的に解消できます。
組織内SaaSの全体像、ライセンス利用状況、契約期限などを継続的に可視化します。Excel手動管理から、ダッシュボードベースの常時管理へ移行できます。
未使用ライセンスの特定、シャドーITの発見、契約更新時期アラートなど、コスト削減と工数削減を同時に実現できます。
アクセスレビュー記録、申請承認履歴、操作ログなどの監査対応に必要な情報を整理・管理します。年次審査の準備期間を短縮し、情シスの戦略業務時間を拡大できます。
一部導入事例では、IT工数の最大50%削減、ITコストの最大75%削減を達成した企業があります(効果は規模・活用方法により異なります)。
ジョーシスは国内外700社以上に導入され、SaaS管理・IDガバナンス・IT資産管理を統合的に担うプラットフォームとして、中堅企業の情シス人手不足解消を支えています。
参考:Josys 公式サイト
人手不足解消を検討する情シス責任者・経営層からよく挙がる質問を整理します。実務判断で迷いやすいポイントを中心にピックアップしました。
業務効率化を先に進めることを推奨します。業務量を減らしてから採用することで、入社後の即戦力化が容易になり、定着率も上がります。逆順だと、業務の属人化と離職リスクを悪化させやすくなります。
業務効率化の初期効果は3〜6ヶ月で見え、本格的な構造改善は1〜2年が標準的な期間です。短期施策と中長期施策を組み合わせて、段階的に進めることを推奨します。
ヘルプデスク、運用業務、定型処理などの非コア業務を委託対象にします。ITガバナンス、セキュリティポリシー策定、システム企画などのコア業務は社内保持が原則です。BPO選定では、SLA・情報セキュリティ要件・自社業務特性とベンダーの強みの整合性を確認します。
業務効率化による負荷軽減、戦略業務へのシフト、キャリアパス設計、適切な待遇、業務裁量権の付与が定着率向上の鍵です。物理的な負荷軽減と精神的な働きがい向上の両面でアプローチします。
定量指標(業務工数、対応時間、エラー件数、戦略業務時間比率)と定性指標(情シスメンバーの満足度、ユーザ満足度)の両方を測定します。経営層への定期報告で、施策の効果と継続投資の必要性を可視化します。
情シスの人手不足は、採用増員だけでは解決しない構造的な課題です。業務量削減・効率化・脱属人化・外部リソース活用・組織設計見直しの5つの軸を組み合わせて、段階的に解決を進めることが現実解です。
中堅企業の情シスでは、SaaS管理・IDガバナンス・IT資産管理を統合したツール基盤の整備が、人手不足解消の中核です。ジョーシスのような統合プラットフォームを活用することで、手作業を大幅に削減しながら、戦略業務に時間を振り向けられる組織体制を実現できます。
採用に着手する前に、まずは業務量削減と効率化を進めることをおすすめします。同じ人員でも対応できる業務量が増え、戦略業務の比率が高まることで、組織としての魅力も向上し、結果的に採用と定着の両面が改善されます。
人手不足は短期解決ではなく、中長期的な組織変革のテーマとして取り組む姿勢が重要です。小さな成功を積み重ねながら、情シスの位置づけを「人が足りない部署」から「組織のIT活用を牽引する戦略パートナー」へ転換していくことが、中長期的な競争力の源泉になります。
人手不足解決プロジェクトで頻出する用語を整理します。経営層・情シス・人事で用語の解釈を揃えることが、円滑な推進の前提です。
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