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「クラウド管理」と「SaaS管理」は、同じ意味で語られることも、まったく別の話として語られることもあります。ツールの検討を始めた情シス担当者が最初につまずくのは、この2つの言葉が指す範囲が資料によって違う点です。
結論から言えば、クラウド管理はIaaS・PaaS・SaaSを含むクラウドリソース全体の運用を指し、SaaS管理はそのうち業務アプリケーションのアカウント・ライセンス・権限に絞った管理を指します。範囲が違うため、必要なツールも担当者も変わります。
本記事では、両者の違いを7つの比較軸で整理したうえで、クラウド管理プラットフォーム(CMP)とSaaS管理プラットフォームの使い分け、自社がどちらから着手すべきかの判断基準、SaaS管理の実践手順までを解説します。
「クラウド管理」と「SaaS管理」は同じ意味で使われることがありますが、厳密には対象範囲も管理の焦点も異なります。クラウド管理はIaaS・PaaS・SaaSを含むクラウドリソース全体の運用を指し、SaaS管理はその中でも業務アプリケーションのアカウントやライセンスに絞った管理です。この違いを把握しておかないと、自社の課題に合わないツールを導入してしまったり、管理の抜け漏れが生じたりするリスクがあります。どちらも情シスが関わる領域ですが、主体となる担当者・必要なスキル・使うツールはそれぞれ異なります。
クラウドサービスは「IaaS(Infrastructure as a Service)」「PaaS(Platform as a Service)」「SaaS(Software as a Service)」の3層に分類されます。この構造を押さえておくことが、クラウド管理とSaaS管理の関係を正確に理解するための前提です。
IaaSはサーバー・ネットワーク・ストレージといったインフラを提供し、利用者がOSやミドルウェアを自分で構築・運用します。PaaSはアプリケーションの実行環境やデータベースまでをベンダーが用意するため、利用者は開発に集中できます。SaaSは完成されたソフトウェアをブラウザからそのまま使う形態で、多くの企業が日常業務で触れているのはこの層です。
3層のうち、利用者側の技術的な管理負担が最も重いのはIaaSです。SaaSではベンダーがインフラ・OS・アプリケーション本体の維持管理を担うため、利用者はアカウントや権限、ライセンスの管理に専念できます。
3層の関係を一覧にすると次のとおりです。
「クラウド」はこの3層すべてを含む上位概念であり、「SaaS」はその一番上の層を指します。つまり「クラウドとSaaSの違い」への答えは、対立関係ではなく包含関係です。SaaSはクラウドの一形態であり、クラウド管理の対象範囲の一部にSaaS管理が含まれる、という位置づけになります。
3層のほかにも「as a Service」を冠した用語が使われます。仮想デスクトップ環境を提供するDaaS(Desktop as a Service)や、データのバックアップ・保護・ライフサイクル管理をクラウド経由のサービスとして利用するDMaaS(Data Management as a Service)が代表例です。いずれも「どう提供されるか」を表す言葉であり、管理すべき対象の層はそれぞれ異なります。用語から入るのではなく、自社が管理したいものがインフラなのか、データなのか、従業員のアカウントなのかを起点に整理すると混乱を避けられます。
参考:IaaS、PaaS、SaaS の違いとは?をわかりやすく解説 | Red Hat
参考:Cloud complexity: why it’s good to be a DMaaS | Computer Weekly
クラウド管理とは、企業がクラウド上で利用するサービス・リソース全体を適切に運用・監視・最適化する取り組みです。IaaSのサーバーリソース(CPU・メモリ・ストレージ)の使用状況監視、コスト配分の把握、セキュリティポリシーの適用、マルチクラウド環境のガバナンス整備などが含まれます。
クラウド管理の主な対象領域は次のとおりです。
主体となるのはインフラエンジニアやクラウドアーキテクトです。クラウドプロバイダーのコンソール操作やインフラコード管理、セキュリティ設計など、高い技術的専門性が求められます。
SaaS管理とは、企業内で利用している複数のSaaSアプリケーションのアカウント・ライセンス・アクセス権限・コストを一元的に把握・統制する業務です。クラウド管理の中でも「SaaS」という層に特化した管理であり、情シス担当者が日常業務として向き合う実務的な課題です。
SaaS管理の主な対象領域は次のとおりです。
SaaS管理を担うのは情シス担当者・IT管理者です。インフラの深い技術知識よりも、各部門が利用しているSaaSを把握しながらHR部門と連携してアカウントライフサイクルを管理する実務力が求められます。SaaS管理という業務全体の位置づけと進め方はSaaS管理の概念と実践手順で体系的に整理しています。
クラウド管理とSaaS管理は、管理対象・主な担当者・必要なスキル・利用するツールのすべてにおいて異なります。以下の比較表で整理します。
クラウド管理はインフラ全体を俯瞰する広い概念です。SaaS管理はその中でも**「人とSaaSの関係」を統制する業務に特化した概念**です。どちらの課題を優先すべきかは、自社のIT環境と直面している問題次第で変わります。
クラウド管理が対象とするのは、企業が利用するクラウドリソース全体です。AWSやAzureで稼働するサーバーインスタンス・データベース・ストレージ・ネットワークなどのIaaSリソースに加え、PaaS上のアプリケーション基盤、そしてSaaSの利用状況まで含みます。管理の焦点は「インフラ・コスト・セキュリティ態勢の最適化」にあります。
SaaS管理が対象とするのは、従業員が業務で利用するSaaSアプリケーションです。Slack・Google Workspace・Salesforce・Zoom・Notionなど、日常的に使うビジネスツールが中心です。管理の焦点は「誰がどのSaaSを利用しているか」「ライセンスに無駄はないか」「退職者のアカウントが残っていないか」という、人と権限に関わる課題にあります。
クラウド管理はインフラエンジニアやクラウドアーキテクトが担います。AWSやAzureのコンソール操作、Terraformによるインフラコード管理、FinOpsの実践など、技術的な専門性が不可欠です。
SaaS管理は情シス担当者が中心です。クラウドプラットフォームへの深い技術的理解よりも、各部門のSaaS利用状況を把握し、HR部門と連携してアカウントのライフサイクルを管理する実務力が問われます。担当者が1〜2名の情シス部門でも、運用ルールとツールの組み合わせによって管理体制を整えることは可能です。
クラウド管理の課題は、マルチクラウド化とクラウドリソースの急増によって深刻化しています。複数のクラウドにまたがるコストを把握できない「クラウドスプロール」や、セキュリティ設定のミスによるデータ漏洩が典型的な問題です。
SaaS管理の課題は、現場主導のSaaS導入とシャドーITによって深刻化しています。IT部門の管理外のSaaSが増え続けることで、ライセンスコストの浪費・退職者アカウントの放置・情報漏洩リスクが同時に積み重なります。
ツールを検討する段階になると、「クラウド管理プラットフォーム(CMP)」と「SaaS管理プラットフォーム(SMP)」という2つの製品カテゴリが並びます。名称は似ていますが、監視する対象がインフラなのか従業員のアカウントなのかという点で設計思想が異なります。どちらを選ぶかは、自社が抱えている課題がインフラ側にあるのかアプリケーション側にあるのかで決まります。
CMPは、パブリッククラウド・プライベートクラウド・ハイブリッド環境を横断して監視・制御するために統合されたソフトウェア群です。セルフサービス型のサービスカタログ、リソースのプロビジョニング自動化、支出の追跡とチャージバック、ポリシーによるガバナンス適用が中心機能になります。一方のSMPは、IT部門・財務部門・調達部門が全社のSaaSポートフォリオを可視化し統制するための製品です。ブラウザ拡張・IdP連携・API接続を組み合わせたアプリと支出の検出、ライセンスの実利用把握、入退社ワークフロー、アクセス権の統制を担います。
2つは代替関係ではなく補完関係です。IaaS/PaaSの比重が大きい企業はCMPを軸にSaaS側をSMPで補い、SaaS中心の企業はSMPを軸にインフラ側をインフラチームと分担する構成が現実的です。「クラウド管理プラットフォーム」という言葉で製品を探し始めた場合も、解決したい課題がアカウントとライセンスであれば、探すべきはSMPだと切り替える必要があります。SMPの機能と導入判断の詳細はSaaS管理プラットフォームとはで解説しています。
参考:改めて知りたいクラウドとSaaSの違いとは?PaaSやIaaSの活用事例も紹介 | KDDI ビジネスエッジ
参考:What is cloud management? | Red Hat
参考:SaaS management platform—Definition and benefits | Flexera
SaaS管理はクラウド管理の一部ですが、情シス担当者にとっては独立した課題として日常的に発生します。現場でよく見られる4つの課題を具体的に解説します。
SaaS管理が困難になる根本的な原因は、SaaSの導入ハードルが低いことです。クレジットカード一枚で即日利用できるSaaSは、現場部門が情シスを通さずに契約するケースが後を絶ちません。その結果、IT部門は全社のSaaS利用状況を把握できなくなり、コスト・セキュリティ・ガバナンスの三つの課題が同時に積み重なっていきます。
「誰が何を使っているかわからない」状態が、多くの情シス担当者が最初に直面する課題です。部門単位でSaaSを個別契約しているケースでは、情シスが把握していないSaaSが数十種類に及ぶことも珍しくありません。
ある調査によると、SaaS管理を情報システム部門で一元管理できている企業はわずか22%にとどまります。残り78%の企業では、SaaS管理が複数部門に分散しているか、そもそも統制の仕組みが存在しない状態です。利用状況が見えない限り、コスト最適化もセキュリティ対策も効果を発揮しません。可視化を進める具体的な手段はSaaS可視化の方法で整理しています。
参考:情シス部門がSaaS管理を一元している企業はわずか22% | 情シスのじかん
SaaSのライセンスは月単位・年単位で契約されますが、利用実態に合わせた見直しは後回しになりがちです。入社時に付与したライセンスは、担当業務が変わっても解約されないまま残ります。複数部門が同じ機能を持つ異なるSaaSを並行して契約しているケースも珍しくありません。
未使用ライセンスのコストは、中堅企業(従業員300〜500名)でも年間数百万円規模に達することがあります。SaaS管理ツールで棚卸しを実施した企業では、不要ライセンスの解約によってITコストを大幅に削減した事例が多数報告されています。
退職者が利用していたSaaSのアカウントが削除されずに残っている状態は、深刻なセキュリティリスクです。元従業員が旧アカウントでSaaSにアクセスできれば、企業の機密情報が漏洩する恐れがあります。退職後もライセンス費用が発生し続けるというコスト上の問題も伴います。
SaaSごとに個別でアカウント削除作業を行う場合、手作業によるミスや漏れが起きやすくなります。利用するSaaSが10種類・20種類と増えるほど、退職者対応のリスクは比例して大きくなります。削除手順と抜け漏れの防ぎ方は退職者アカウントの削除方法にまとめています。
シャドーITとは、IT部門の承認なしに従業員や部門が独自に利用しているSaaSやクラウドサービスを指します。業務効率化を目的として現場が自発的に導入するケースが多いですが、企業のセキュリティポリシーが適用されないため、情報漏洩やコンプライアンス違反のリスクが生じます。
シャドーITは可視化しなければ存在を把握できません。SaaS管理ツールのシャドーIT検出機能を使うことで、IT部門が認識していないSaaSの利用実態を洗い出し、承認・非承認の判断を適切に行える状態を整えられます。どのようなものがシャドーITに該当するのかはシャドーITの種類と具体例で具体的に確認できます。
SaaSの契約が部門単位で結ばれている企業では、契約状況そのものが情シスから見えなくなります。同じSaaSを営業部門と管理部門が別々のプランで契約していたり、更新日と支払い主体が部門ごとに違っていたりするため、全社のSaaS支出を1枚の表にまとめられません。
複数部門の契約状況を管理するうえで、最低限そろえておきたい情報は次の5つです。
このうち見落としやすいのが更新日と解約通知の期限です。自動更新のSaaSは更新日を過ぎると次の契約期間の費用が確定してしまうため、契約情報を一元化し、更新カレンダーとして運用する必要があります。契約とライセンスを軸にした整理の進め方はSaaSライセンス管理とはも参考にしてください。
クラウド管理はインフラ担当者やクラウドエンジニアが中心になりますが、情シス担当者もその必要性と対処法を把握しておく必要があります。IaaS・PaaSの導入が進む企業では、SaaS管理と並行してクラウド管理の整備も避けて通れません。
クラウド管理の課題は「コスト超過」「セキュリティリスク」「ガバナンスの欠如」の三つに大別されます。それぞれに有効なアプローチが存在します。
AWSやAzureを利用する企業では、使っていないインスタンスが起動し続けたり、リソースが過剰に確保されたりすることで、クラウド費用が予算を大きく超過するケースがあります。この問題に対応するフレームワークが**「FinOps(Financial Operations)」**です。
FinOpsは、クラウド支出を削るだけの活動ではなく、技術・財務・事業部門が同じデータを見ながらコストと事業価値のバランスを継続的に判断する運用フレームワークです。使われていないリソースの停止・削除、リザーブドインスタンスの活用、部門別コスト配分の透明化などを継続的に実践します。CloudHealthなどのクラウドコスト管理ツールを導入することで、どのリソースが無駄になっているかを可視化し、削減アクションを取りやすくなります。SaaSを含めたIT支出全体にFinOpsの考え方を適用する手順はFinOpsとはで解説しています。
クラウド環境でのセキュリティ事故の多くは、不適切な設定が原因です。ストレージバケットの誤った公開設定や過剰な権限付与がその代表例です。こうした設定ミスを継続的に検出・修正する仕組みが**「CSPM(Cloud Security Posture Management)」**です。
CSPMツールは、AWSやAzureの設定状態を自動スキャンし、ベストプラクティスからの逸脱を検出します。情シス担当者がCSPMを直接運用するケースは少ないですが、インフラチームと連携してセキュリティ要件を理解し、管理責任の所在を明確にしておくことが重要です。
複数のクラウドプロバイダー(AWS・Azure・GCP)を同時に利用するマルチクラウド環境では、それぞれのコンソールを個別に管理する運用は現実的ではありません。統合的なクラウド管理プラットフォームを導入することで、複数クラウドにまたがる利用状況・コスト・セキュリティを一画面で監視できます。
マルチクラウド管理の整備は、クラウド活用の成熟度が上がるほど必要性が増します。内部統制・監査対応の観点からも、「誰がどのクラウドリソースにアクセスしているか」を常時把握できる体制が求められます。
参考:クラウド管理の必要性やメリット・デメリット、おすすめのツールを紹介 | aslead(野村総合研究所)
「クラウド管理」と「SaaS管理」のどちらを先に整備すべきかは、自社のIT環境と直面している課題によって変わります。多くの企業では両方の管理が必要になりますが、リソースが限られる場合は優先順位の判断が重要です。
以下の診断チェックリストを活用して、自社の状況を確認してください。
次のいずれかに当てはまる企業は、SaaS管理から着手することをお勧めします。
こうした状況では、SaaS管理ツールの導入によって短期間で効果を出せます。アカウントの可視化、未使用ライセンスの特定、退職者アカウントの削除自動化は、導入後数ヶ月のうちに成果が確認できる取り組みです。
次のいずれかに当てはまる企業は、クラウド管理の整備を先行させる必要があります。
IaaSやPaaSを積極的に活用している企業では、クラウドコストが経営上の重要課題になります。FinOpsのアプローチを取り入れ、クラウドリソースの最適化を継続的に行う体制の構築が急務です。
従業員数が500名を超え、SaaSとIaaS/PaaSの両方を本格活用している企業では、SaaS管理とクラウド管理を並行して整備することが求められます。それぞれ別のツールで管理するよりも、統合的なプラットフォームで一元管理できる体制のほうが、長期的な運用コストを抑えられます。
ジョーシスのようなSaaS・デバイス統合管理プラットフォームは、SaaS・ユーザー・ライセンス・デバイスの管理を一元化しつつ、IaaS/PaaSのコスト最適化やCSPMはFinOpsツール・インフラチームと役割分担して進めるのが現実的です。情シス担当者が日常業務であるSaaS・デバイス管理をワンプラットフォームで完結できる体制を整えることで、業務効率と管理品質を同時に向上させられます。
現実的な分担は、情シスが日常業務であるSaaS・デバイス管理を1つのプラットフォームで完結させ、IaaS/PaaSのコスト最適化とCSPMはインフラチームと専用ツールに任せる形です。
ジョーシスの資料をダウンロードする SaaS・デバイス統合管理プラットフォームの概要を5分で把握できます。 資料をダウンロードする
「SaaS管理が必要なことはわかっているが、何から手をつければよいかわからない」という情シス担当者は少なくありません。SaaS管理を実践するための4ステップを解説します。
出発点は「現状把握」です。自社が利用しているSaaSの全容を把握し、コスト・セキュリティ・運用の観点で課題を特定します。その上でツールの導入を検討し、継続的な運用体制を整えていきます。
最初に取り組むべきことは、全社で利用しているSaaSの棚卸しです。各部門の担当者にヒアリングしながら、利用サービス名・契約形態(個人カード・法人契約の区別)・月額費用・利用人数・担当者を一覧にまとめます。
手作業の棚卸しは時間がかかりますが、現状を把握するための出発点として避けられません。SaaS管理ツールを導入する際も、このデータがベースになります。棚卸しの過程で、情シスが把握していなかったSaaSが数多く見つかることも珍しくありません。棚卸しの具体的な手順とチェックリストはSaaS棚卸しのやり方を参照してください。
棚卸しが完了したら、各SaaSのライセンス数と実際の利用状況を照合します。付与されているライセンスのうち、直近90日間でログインが確認されているアカウントがどれだけあるかを確認します。
利用頻度が低いアカウントは不要ライセンスの候補です。削減幅は利用中のSaaS数・契約形態・未使用ライセンスの比率によって異なりますが、未使用ライセンスを棚卸しして解約するだけでもコスト圧縮につながります。この作業自体が、SaaS管理ツール導入後の費用対効果を事前に見積もる材料にもなります。
棚卸しと並行して、アカウント管理の運用ルールを文書化します。「新規入社時はどのSaaSをいつ発行するか」「退職時は何営業日以内にアカウントを削除するか」「権限変更は誰が承認するか」といった標準プロセスを定めます。
担当者が変わるたびに管理品質が落ちる組織では、ルールが存在しないことが根本原因です。プロセスを明文化し、HR部門との連携フローを確立しておくことが、長期的なSaaS管理の基盤になります。
SaaSの利用が拡大すると、手作業での管理には限界が来ます。SaaS管理ツールを導入することで、アカウントの発行・削除・権限変更を自動化し、利用状況のリアルタイム監視が可能になります。
SaaS管理ツールの主な機能は次のとおりです。
SaaS運用は一度整えて終わる作業ではありません。ツールを導入したあとも、利用状況・契約・権限の3点を定期的に見直すサイクルを回すことで、管理された状態を維持できます。
確認する項目を頻度で分けておくと、運用が定着しやすくなります。
運用が属人化している組織では、担当者の異動でこのサイクルが止まります。誰が・いつ・何を確認するかを運用ルールに落とし込み、ツールのレポートやアラートで代替できる部分は自動化しておくことが、SaaS運用を続けられる体制の条件です。
参考:SaaS管理ツールのメリットとデメリットは?導入時の比較ポイントも解説 | ジョーシス
クラウド管理はインフラエンジニアの領域と思われることが多いですが、情シス担当者も基本的な考え方を理解しておく必要があります。SaaS管理の延長線上にあるクラウドコスト管理やセキュリティ管理は、情シスが連携すべき重要な領域です。
FinOpsは、クラウドの使用コストを可視化・最適化するための組織的な取り組みです。技術チーム・財務チーム・ビジネスチームが連携して、クラウドの価値を最大化することを目指します。情シス担当者は、FinOpsの概念を理解した上でインフラチームや経営層との橋渡し役を担います。
情シスが実務として関与できる領域には、部門別クラウドコストの配分確認、予算超過時のアラート対応、SaaSとIaaSを合わせたIT支出全体の把握などがあります。
FinOpsの考え方そのものは前章で述べたとおりです。情シス担当者に求められる役割は、自分でクラウドコストを削ることではなく、インフラチームと経営層の間で判断材料をそろえる橋渡しにあります。SaaSとIaaSを分けて報告すると全体像が見えないため、IT支出をひとつの視点でまとめる立場が必要になります。
情シス担当者は、自社が利用するクラウドサービスの責任範囲を理解した上で、利用者側のセキュリティ対策(アクセス権限の最小化・多要素認証の強制・ログ監視など)を整備する役割があります。SaaS管理でのアカウント権限統制は、責任共有モデルの実践そのものです。
情シス担当者がクラウド管理に関与する目的は、ITガバナンスの維持です。誰がどのクラウドサービスをどの目的で利用しているかを把握し、コスト・セキュリティ・コンプライアンスの観点から適切な管理体制を整えることが求められます。
SaaS側の可視化とIaaS/PaaS側のコスト監視は、担当部門も使うツールも別になるのが一般的です。それでも「誰が・どのクラウドサービスに・どの権限でアクセスしているか」という問いは両者で共通します。報告フォーマットと棚卸しの実施時期をそろえておくと、監査対応のたびに情報を集め直す手戻りを減らせます。
SaaS管理ツールを選ぶ際は、現時点のSaaS管理機能だけでなく、将来的なクラウド管理との統合も考慮することが重要です。別々のツールで管理すると、管理コスト・運用負荷・データの断絶という問題が生じます。
選定時に確認すべきポイントを以下に整理します。
全社のSaaS利用状況を自動で棚卸しできるか、IT未承認のSaaSを検出できるかは基本機能として必須です。手動棚卸しに依存するツールでは、利用状況の把握に限界があります。
自動検出機能を持つツールは、IdP(Okta・Microsoft Entra ID、旧Azure AD)のログやブラウザ拡張機能と連携して、従業員が実際に利用しているSaaSを自動で検知します。IT部門が知らなかったSaaSの存在を把握でき、シャドーITのリスクを低減できます。
なお、ユーザーとクラウドサービスの間に立ってアクセス制御・DLP・シャドーIT可視化を担う**CASB(Cloud Access Security Broker)**という製品分野もあります。CASBがセキュリティ制御に主眼を置くのに対し、SaaS管理はアカウント・ライセンス・契約・利用状況の運用統制に主眼があります。両者は目的が異なるため、補完的に使い分けます。
入社・異動・退職に伴うアカウントの発行・変更・削除を自動化できるかを確認します。HR系システム(SmartHRなど)やIdP(Okta・Microsoft Entra IDなど)との連携機能が充実しているほど自動化の範囲が広がり、情シスの工数削減と退職者アカウント放置リスクの解消を同時に進められます。手動作業が多い組織ほど、導入効果は大きくなります。
未使用ライセンスを自動検出し、解約候補を提示できるかを確認します。利用状況を表示するだけでなく、具体的なコスト削減アクションを示せるツールが理想的です。
ライセンスコストの削減効果は、SaaS管理ツール導入のROI(投資対効果)を評価する上で重要な指標です。導入前に現状の未使用ライセンス数とコストを把握しておくと、ツール導入後の効果測定が容易になります。
SaaS管理とデバイス管理を統合して扱えるプラットフォームは、情シスの管理業務を一元化する上で大きなメリットがあります。PC・スマートフォン・タブレットなどのデバイス資産とSaaSのアカウント情報を紐づけることで、「誰がどのデバイスでどのSaaSを使っているか」を把握できます。
入退社時のデバイス回収とアカウント削除を一つのプラットフォームで完結できると、業務効率が大幅に向上します。情シスの日常業務はSaaSとデバイスの両方に関わるため、統合管理の価値は高くなります。
参考:SaaS管理ツールとは?メリット・選び方・導入のコツを解説 | SmartHR
デモで実際の動作を確認する ジョーシスのSaaS・デバイス統合管理プラットフォームの機能を、実際の画面でご確認いただけます。 デモを予約する
ジョーシスは、SaaSアプリケーション・デバイス・アクセス権限を一元管理するAI駆動型プラットフォームです。情シス担当者が日常的に対応するSaaS管理業務を自動化し、SaaSの利用状況やアカウントを横断的に可視化します。IaaS/PaaSのリソース管理やCSPM・FinOpsは専用ツールやインフラチームとの連携領域であり、ジョーシスはその中でSaaS・ユーザー・ライセンス・デバイスの統制を担います。国内外1,000社以上の導入実績を持ち、350以上のSaaSアプリケーションとAPI連携が可能です。
ジョーシスのSaaS管理機能は、実際の導入企業の課題から逆算して設計されています。利用状況のリアルタイム把握から、アカウントライフサイクルの自動化まで、情シスの実務に直結する機能を網羅しています。
主な機能は次のとおりです。
ジョーシスを導入した企業では、公開事例として次のような成果が報告されています。いずれも各社の導入前の状況・利用範囲によって異なる個社別の結果です。
これらは事例によって得られた成果であり、削減効果は個社の状況により異なります。いずれもSaaS管理の自動化と可視化によって実現しており、入退社時のアカウント管理工数削減、未使用ライセンスの特定・解約、シャドーITリスクの低減が主な要因です。
ジョーシスはSaaS管理とデバイス管理を同じ画面で扱えるため、「誰が・どのデバイスで・どのSaaSを使っているか」を1本の線でたどれます。入退社対応でデバイスの回収手配とアカウント削除を別々の台帳で追う必要がなくなる点が、情シスの工数削減に直結します。
必ずしも別々のツールを用意する必要はありません。SaaS管理プラットフォームの中には、クラウドサービス全体の可視化に対応しているものもあります。一方、IaaSのリソース管理・コスト最適化(FinOps)には、専用のクラウド管理ツールが別途必要になることが多いです。自社の課題と管理対象に応じて、必要な機能を持つツールを選定することが重要です。
削減効果は企業規模・現状の管理状況・未使用ライセンスの比率によって大きく変わります。導入前に未使用ライセンス数と月額単価を棚卸しし、削減見込みを試算しておくことが現実的です。また、入退社対応の自動化により、情シスの工数削減も期待できます。ジョーシスの導入事例では、コスト・工数の削減が報告されていますが、成果は個社の状況により異なります。
SaaS管理ツールのシャドーIT検出機能を活用します。業務端末のブラウザ活動データや、IdPのログイン履歴を分析することで、IT部門が把握していないSaaSの利用実態を洗い出せます。ジョーシスのSaaS Discoveryは、ブラウザ活動データを分析して未承認SaaSの利用状況を可視化する機能を備えています。
情シス担当者が1〜2名であっても始められます。最初は手作業での棚卸しからスタートし、管理対象が増えた段階でツールの導入を検討するアプローチが現実的です。最初から完璧な管理体制を作ろうとするよりも、HR部門との連携フローを早期に整備することを優先するほうが成果につながりやすいです。
シャドーIT・退職者アカウント・ライセンスコストの課題が顕在化している場合はSaaS管理を優先してください。クラウドインフラのコスト超過・セキュリティリスクが深刻な場合はクラウド管理の整備を先行させてください。多くの中堅企業では、従業員が毎日触れるSaaSに関する課題が先に表面化するため、SaaS管理から着手するケースが一般的です。
クラウド管理とSaaS管理の違いは、管理対象の範囲と焦点にあります。クラウド管理はIaaS・PaaS・SaaSを含むクラウドリソース全体の運用最適化を指し、SaaS管理はその中でも業務アプリケーションのアカウント・ライセンス・権限に特化した管理です。
情シス担当者が日常的に直面する課題の多くはSaaS管理の領域に集中していますが、クラウドインフラの利用が進む企業ではクラウド管理の整備も並行して求められます。自社のIT環境と課題を正確に把握した上で、優先すべき管理領域を判断することが出発点になります。ツールを検討する段階では、クラウド管理プラットフォーム(CMP)とSaaS管理プラットフォーム(SMP)のどちらが自社の課題に対応する製品カテゴリなのかを、最初に切り分けてください。
SaaS管理ツールの導入は、利用状況の可視化・コスト最適化・セキュリティ強化を同時に実現できる手段です。ジョーシスは350以上のSaaSとの連携・デバイス管理との統合・AI活用による自動化など、情シス担当者の管理業務を包括的にサポートする機能を備えています。
まずは資料でジョーシスの概要をご確認ください。
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