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SaaSコストを見直す際は、年間支出だけでなく、利用者数、契約ライセンス数、実際に使う機能を一緒に確認します。業界平均より高いという理由だけでは、削減すべき契約は決まりません。部門ごとの業務や必要な機能を確認して、見直せる費用を特定します。
平均や相場を比較する前に、集計期間、対象サービス、従業員数などの条件を揃えてください。そのうえで、未使用ライセンス、退職者の残存アカウント、機能の重複、過剰なプランを順に点検すると、契約更新時の判断材料が揃います。
情シスと経理、利用部門が同じ契約一覧を使い、削減候補と実際に減った支出を分けて管理することが、継続的なコスト見直しにつながります。
SaaSコストを評価する際は、絶対額だけでなく、組織規模や売上に対する比率といった相対指標を併用することで、客観的な分析が可能になります。代表的な指標を整理します。
従業員1人あたりの年間SaaS支出は、「年間SaaS支出総額÷従業員数」で算出します。組織の規模によらず比較しやすい基本指標です。比較する際は、対象サービス、対象期間、従業員数の集計方法をそろえてください。
売上に対するSaaS支出の割合は、「年間SaaS支出総額÷年間売上×100」で算出します。組織のIT投資水準を測る目安になります。自社の過去の値と比べる際は、サービスの集計範囲と会計期間をそろえます。
国内の参考情報として、JUAS『企業IT動向調査報告書2026』では、2025年度の売上高に占めるIT予算全体の比率は、全体703社の集計でトリム平均1.47%でした。トリム平均は上下各10%の回答を除いて算出した平均です。この値はIT予算全体の比率であり、SaaS支出だけが売上に占める割合を示すものではありません。
IT予算に占めるSaaS支出の割合は、「年間SaaS支出総額÷年間IT予算×100」で算出します。割合は組織のシステム構成によって大きく異なります。SaaS以外の費用をどこまでIT予算に含めるかを定義してから比較してください。
ライセンス利用率は、「確認期間中の実利用者数÷契約ライセンス数×100」で算出します。利用率の低いサービスから、利用部門に必要性と今後の利用予定を確認します。
Zyloの統計記事には、2025年のライセンス利用率として54%という数値が示されています。この集計値を、自社の契約を解約すべきかを決める基準にはできません。確認期間、利用目的、業務上の必要性をそろえて、個別の契約を判断してください。
似た機能を持つ複数のSaaSを契約している場合の、機能重複に起因するコストです。プロジェクト管理ツール、コミュニケーションツール、ファイル共有サービスなどで重複が発生しやすい傾向があります。利用部門と必要機能を確認し、統合できる契約を洗い出してください。
SaaSコストの比較では、金額より先に分母と集計範囲を揃えます。全従業員を分母にした数値と、特定サービスの利用者だけを分母にした数値は、そのまま比較できません。自社の数値がどの契約と期間を対象にしているかを記録し、外部のベンチマークも同じ条件か確認してください。
条件が揃わない場合は、平均との差をそのまま無駄な費用と判断せず、自社の前回集計やサービス別の利用状況と比べます。確認できていない契約を含む段階では、その範囲を残しておくと、後から集計対象が増えた際に費用増加の理由を説明できます。
参考:JUAS『企業IT動向調査報告書2026』図表2-1-23(IT予算比率)
参考:Zylo「70+ SaaS Statistics for 2026」
SaaSの使い方は業界や組織規模により異なります。ここでは規模ごとの利用の特徴と、出典を明記した調査の参考値を紹介します。金額は対象国、企業規模、集計範囲によって変わるため、自社との比較では条件を確認してください。
Microsoft 365、Google Workspace、Slack、Zoom、Salesforce、HubSpotなどの基本的なSaaSが中心です。事業の成長に合わせてSaaSが急速に増えるフェーズで、ガバナンスが追いつかずシャドーITが発生しやすい段階でもあります。
業務領域別に専門SaaSが追加されます。営業支援(Salesforce、HubSpot)、人事(freee、SmartHR)、会計、プロジェクト管理(Asana、monday.com)、デザイン(Figma、Adobe Creative Cloud)など、部門ごとに契約が増えていきます。
ソニービズネットワークスが2025年9月に、従業員100〜500名の企業でIT資産・セキュリティ管理を担当する109名を対象に行った調査では、調査対象企業の55.1%が11種類以上のSaaSを利用していました。
業務領域別の専門ツールに加え、エンタープライズ向け統合プラットフォーム(ServiceNow、Workday)、データ分析(Tableau、Snowflake)の導入が進みます。部門ごとの契約が増えるため、全社の契約一覧で支出を把握することが重要になります。
グローバル展開、業界規制対応、高度なガバナンス機能を備えたエンタープライズ製品が中心です。
Verticeが2025年5月に公開した資料では、2025年3月の従業員1人あたり年間SaaS支出は平均9,000米ドルとされています。同資料の業界別の掲載値は、ITが10,050米ドル、医療が10,150米ドル、金融・専門サービスが8,750米ドル、小売・消費財が7,750米ドルです。集計対象の企業に関する参考値として扱い、自社との比較では対象国、企業規模、対象期間、支出の集計範囲を確認してください。
組織の規模や業界だけでSaaS支出の妥当性は決まりません。利用部門ごとに、契約しているサービス、必要な機能、契約ライセンス数、実利用者数を整理し、全社の支出と突き合わせてください。
参考:Vertice「SaaS Spend Per Employee Benchmarks」
参考:ソニービズネットワークスのSaaS管理実態調査(2025年11月公表)
自社のSaaSコストが想定より高い場合は、次のような構造的な要因がないかを確認します。代表的な4つの要因を整理し、対策の起点としてください。
シャドーITはまず"未管理契約の発見と把握"が論点です。
情シス部門の関与なく現場部門がSaaSを契約することで、機能重複や類似サービスの並行利用が発生します。部門ごとの契約を全社の一覧に集め、同じ用途のサービスがないかを確認してください。
退職者のアカウントが削除されないまま、ライセンス料が課金され続けるケースです。前述のソニービズネットワークスの調査では、15.6%の企業で退職者アカウントの削除漏れが報告されています。退職者や異動者のアカウントは、利用停止だけでなく、ライセンス数と請求への反映も確認します。月額課金なら、「月額単価×課金が残ったライセンス数×課金月数」を出発点に、実際の契約・請求条件に合わせて費用を確認してください。
実際の利用状況に対して過剰な機能を持つ上位プランを契約しているケースです。ベンダーの営業提案で導入したものの、実利用は基本機能に限定されている場合が典型例です。プランを変更する際は、業務と管理に必要な機能を確かめたうえで、変更前後の費用を同じライセンス数と対象期間で比較します。
機能重複は、把握済みのSaaSを"標準化・統合"する観点から対処します。
似た機能を持つ複数SaaSを契約している場合、機能統合により重複コストを削減できます。たとえば、ビデオ会議(Zoom、Google Meet、Microsoft Teams)、ファイル共有(Box、Dropbox、Google Drive)、プロジェクト管理(Asana、monday.com、Notion)といった領域で、重複が発生しやすいです。
参考:ソニービズネットワークスのSaaS管理実態調査(2025年11月公表)
SaaSコストを削減するには、複数のアプローチを組み合わせることが効果的です。ライセンスの整理、プランの見直し、機能重複の統合、ベンダー交渉、シャドーITの把握を、自社の課題に合わせて組み合わせます。施策同士で削減候補が重複しないよう確認してください。
利用率の低いライセンス、退職者・異動者の残存ライセンス、休眠アカウントを定期的に洗い出します。取得できる利用記録を確認し、サービスごとの業務周期に合わせて未使用の候補を抽出します。利用部門に必要性を確認した後、契約数を変更できる時期と請求への反映を確認してください。
各SaaSの利用機能を分析し、実利用に応じたプランダウンを実施します。エンタープライズプランから標準プランへの変更、ユーザー単位プランからチームプランへの統合など、契約形態の見直しで効果を出せます。
複数SaaSの機能重複を可視化し、組織標準ツールへの統合を進めます。削減額は、解約や契約変更が可能な時期と移行に伴う費用を踏まえて見積もります。標準化を進める際は、現場部門との対話と段階的な移行が成功の鍵です。
契約更新タイミングでベンダー交渉を行い、ディスカウント、ボリュームディスカウント、複数年契約による割引を相談します。利用率データ、比較条件の合う参考値、競合製品の見積もりを根拠として用意してください。
Zyloの統計記事では、Zyloを利用した組織のSaaS契約更新時の削減率は平均17%と報告されています。この数値だけでは削減施策の内訳は分からないため、価格交渉だけで得られる値引き率や、自社の削減目標として扱わないでください。
経理部門の請求書、クレジットカード明細、SaaS管理プラットフォームの自動検出を組み合わせ、未管理SaaSを特定します。業務継続性を確保しながら、組織標準ツールへの移行や正式契約への移管を進めます。
参考:Zylo「70+ SaaS Statistics for 2026」
SaaSを低コストで運用するには、単価だけでなく必要な機能、利用人数、既存ツールとの重複を確認します。安いプランを選んでも、業務で必要な機能が足りず別サービスを追加すれば、全体の支出が増えることがあります。利用部門の要件と全社の契約一覧を突き合わせて判断してください。
プランを下げる前に、現在使っている機能と今後必要な機能を利用部門へ確認します。上位プランの機能を使っていないように見えても、管理部門に必要なセキュリティや統制の機能が含まれる場合があります。利用頻度と管理要件の両方を確認したうえで候補を絞ります。
使わない機能があるだけでプランを変更せず、残すべき機能を先に決めます。必要最小限のプランを選ぶための根拠を、利用部門と管理部門が同じ表で確認できるようにしてください。
未使用ライセンスは、利用者の必要性と契約数を照合する課題です。機能の重複は、どのツールを全社で使うかを決める課題で、利用部門との合意や移行が必要になります。同じ削減候補としてまとめず、確認する担当と実行する手順を分けて管理します。
退職者や異動者のアカウントは、アクセス権限の棚卸しと合わせて確認します。利用を停止する判断と、ライセンス数や請求額が変わる時期も区別してください。アカウントを無効化しただけで支出が減ったと扱わず、契約条件と請求に反映されたかまで確認します。
重複契約を統合する場合は、利用者数だけで移行先を選ばず、必要機能と管理要件を照合します。使い慣れたツールが変わる部門には、移行と研修の予定を共有してください。契約費だけでなく、移行中の対応も含めて実施可能な計画にします。
値引き率の大きさだけを目標にせず、必要なライセンス数と期間を先に整理します。複数年契約で単価が下がっても、利用者数や業務要件が変わったときに見直せるかを確認してください。長期契約の条件と自社の成長見通しを合わせて検討します。
更新日、利用率、必要機能を整理したら、SaaSコスト最適化の5ステップに沿って優先順位を付けます。交渉による値引きと、不要な契約の整理による削減を分けると、翌年も続く効果を把握しやすくなります。
SaaSベンダーとの交渉は、根拠のある材料を持つことで成功率が上がります。代表的な交渉材料を整理します。
実際の利用状況を示すデータ(アクティブユーザー数、最終ログイン日、機能利用率)は、最も強力な交渉材料です。たとえば、契約100ライセンスに対して確認期間中の実利用者が60人だった場合は、残るライセンスの利用予定と必要性を確認します。その結果を基に、契約数や条件の見直しを相談します。
同業他社の相場、競合SaaSの見積もりは、価格交渉の客観的根拠となります。複数ベンダーから相見積もりを取得し、実勢価格として提示することで、交渉力が大きく高まります。
SaaStrでJason Lemkinは、複数年契約では追加で10〜20%の割引を提示する企業が多いという見解を示しています。割引が得られることを前提にせず、契約期間中の利用人数の変化、解約条件、総支払額を確認してください。ベンダーの財務健全性、契約解除条件、SaaSの成熟度も慎重に評価する必要があります。
エンタープライズプランで提供される高度機能のうち、実際に使う機能と使わない機能を整理することで、プランダウン交渉の根拠となります。機能要件マトリクスを作成し、必要最小限のプラン選択を主張します。
事業成長に伴うライセンス追加、機能追加の見通しを示すことで、ベンダー側にも長期的なメリットを訴求できます。採用計画や利用部門の拡大に基づくライセンス需要の見通しがある場合は、必要数と時期を整理して交渉材料にします。
参考:SaaStr「How big a discount should I give for multi-year deals」
SaaSコスト最適化を体系的に進めるためには、5ステップで運用設計を進めることが効果的です。
組織が契約しているSaaSをすべて棚卸しし、契約数、年間費用、利用者一覧、最終ログイン日を一元化します。経理部門の請求書、クレジットカード明細、各部門ヒアリング、SaaS管理プラットフォームを総動員してデータを集約します。
ここまで紹介した1人あたりコスト、売上比率、IT予算比率といった指標で自社の位置を評価します。自社の前回集計や比較条件の合う参考値と照らし、差が生じる理由を確認します。数値が高いという理由だけで過剰と判断せず、必要機能や利用人数の違いも確認してください。
ライセンス監査、プラン最適化、機能重複統合、ベンダー交渉、シャドーIT統制の5つから、自社で実施可能なアプローチを選定します。優先順位は、効果が大きく実行コストが低いアプローチから着手します。
削減候補、合意した契約変更、実際に請求へ反映された削減を分けて記録します。見込み額の段階で成果としないことが大切です。次回の集計では同じ対象期間とサービスを比較し、利用人数や集計範囲の変化も合わせて説明してください。
契約更新や人員の変化を踏まえて見直しの時期を決め、新規契約・解約・プラン変更を契約一覧に反映します。SaaS管理プラットフォームを活用することで、継続的なモニタリングを最小工数で実現できます。
SaaSコストと社内コミュニケーションで頻出する用語を整理します。
SaaSコストの最適化を継続的に実践したい情シス部門には、Josysが現実的な選択肢になります。Josysは、SaaS、デバイス、アカウントを統合管理するAI駆動のアイデンティティセキュリティ基盤で、契約しているSaaSの一覧、ライセンス利用率、未使用アカウント、重複機能、コスト分析を自動で可視化します。
Josysは2021年のサービス開始以来、国内外1,000社以上に導入され、350以上のSaaSアプリとの連携に対応しています。Josysが2024年9月に公表した顧客500社のデータ分析では、SaaS支出の25%が、十分に活用されていないライセンス、未割当ライセンス、シャドーライセンスに費やされていました。この割合をそのまま自社の削減見込みにせず、利用状況と契約条件を確認し、実際に減らせる支出を見積もってください。
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SaaSコストの実務でよく寄せられる質問にお答えします。
ライセンス利用率の確認から始めます。利用率の低いサービス、機能の重複、退職者の残存ライセンスを確認します。候補ごとに利用部門の確認と契約条件の照合を行い、削減可能な額と実行できる時期を整理してください。
経理部門の請求書、クレジットカード明細、SaaS管理プラットフォームの自動検出、各部門ヒアリングを組み合わせる必要があります。特にSaaS管理プラットフォームは、SSO連携やAPI連携で網羅的にSaaSを検出できるため、運用の中心となります。
利用率データ、業界相場、競合見積もり、複数年契約の意思の4点が主要な材料です。更新日と解約・変更の通知期限を確認し、利用部門との調整や見積もり比較に必要な期間を確保して準備を始めます。利用実態、必要機能、競合見積もりをそろえて交渉してください。
組織の現状によります。削減候補ごとに金額、実行時期、移行費用を見積もり、実施可能なものを積み上げて目標を設定します。見込み額と請求に反映された削減額を分けて記録してください。
組織の現状によります。未管理SaaSや休眠ライセンスが多い企業では、20〜40%の削減が目標になりうるケースもあります。初年度は10〜20%、3年累計で30〜40%といった段階的な目標設定が、現場の混乱を避けつつ効果を出す方法です。
まず契約一覧に更新日、ライセンス数、実利用者、部門の確認結果を揃えてください。削減候補を見つけたら、業務に必要な機能を維持できるかと、いつ請求額へ反映されるかを確認します。候補額をそのまま成果にせず、契約変更後の支出を同じ条件で比較することが、次の見直しにつながります。
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