
SaaS費用が膨らみ続けているのに、どこから手をつければよいかわからない——そんな情シス担当者は少なくありません。本記事では、棚卸しから継続監視まで5ステップで実践できるSaaSコスト最適化の方法を、具体的な削減目安とともに解説します。
SaaSコスト最適化とは、契約中のSaaSサービスを整理・分析し、無駄な支出を削減しながら必要な機能を維持するプロセスです。
SaaS支出の25〜30%は最適化の余地があるといわれています(出典:Productiv調査)。100名規模の企業でも、年間120〜360万円(月額10〜30万円)の削減が期待できます。コスト削減だけでなく、セキュリティリスクの低減や管理工数の圧縮にもつながるため、情シス部門にとって取り組む価値の高い施策です。
SaaS費用が増加する背景には、組織として管理しきれない3つの構造的な問題があります。
①シャドーIT(野良SaaS)の蔓延
部署や個人が情シスの承認なく導入したSaaSは、コスト管理の対象から外れます。クレジットカードや経費精算で個別に契約されるケースが多く、全体の支出把握が困難になります。特にリモートワーク普及後、業務効率化を目的とした個人契約が急増し、情シスが把握できていないSaaSが組織内に数十〜数百種類存在することも珍しくありません。
②退職者・異動者アカウントの放置
従業員が退職・異動した後も、SaaSアカウントが削除されずに課金が継続するケースは非常に多く見られます。Productivの調査によれば、SaaSライセンスの平均45%しか定期的に活用されていません。退職者アカウントは誰も使わないまま費用だけが発生する「ゾンビアカウント」となり、セキュリティリスクも同時に生み出します。
③機能が重複したSaaSの並行契約
チャットツール・ドキュメント管理・タスク管理など、同じカテゴリのSaaSが複数部署で別々に契約されていることがあります。部署間の連携が薄い組織ほど重複契約が起こりやすく、統合・整理の機会が後回しになりがちです。
SaaSコストを放置するリスクはコスト面だけにとどまりません。
コスト面では、使われていないライセンスへの支払いが毎月積み上がり続けます。月5〜15万円規模の未使用ライセンスコストが発生しているケースは100名規模の企業でも珍しくなく、年間60〜180万円の無駄な支出につながります。
セキュリティ面では、退職者アカウントが残存すると、不正アクセスや情報漏洩のリスクが生じます。シャドーITとして導入されたSaaSは情シスのセキュリティポリシー審査を受けておらず、機密データが管理外サービスに保存されるリスクもあります。コンプライアンス観点でも、管理外のSaaSは監査対応を困難にします。
SaaSコスト最適化は、一度の施策で終わるものではなく、継続的なサイクルとして回し続けることが重要です。
以下の5ステップが基本的な進め方です。各ステップを順番に進めることで、即効性の高い施策から長期的な管理体制構築まで体系的に取り組めます。
ステップ1〜2は「現状把握」のフェーズです。ここを丁寧に行うことで、ステップ3〜4の削減施策の効果が大きく変わります。ステップ5は最適化効果を維持するための運用体制づくりです。
プランのダウングレード(月3〜10万円削減)や年次契約への切り替え(10〜20%削減)はステップ4の中で対応できます。すべてのステップを着実に進めることで、100名規模の企業でも年間120〜360万円の削減が視野に入ります。
コスト最適化の第一歩は「何にいくら払っているか」を把握することです。情シスが把握していないSaaSが存在する限り、最適化は始まりません。

SaaS棚卸しを効率よく進めるには、複数のデータソースを組み合わせることが重要です。一つのソースだけでは把握漏れが生じます。
①経費明細・請求書
クレジットカード明細や経費精算システムのデータは、SaaSへの支払いを網羅的に把握する出発点です。「Software」「SaaS」「Cloud」「月額」などのキーワードで抽出し、支払先サービス名と金額をリストアップします。部署ごとに異なる支払い経路がある場合は、それぞれのデータを統合します。
②SSOログ・認証ログ
シングルサインオン(SSO)のログには、どのSaaSに誰がアクセスしているかの記録が残ります。SSOに連携されているサービスは利用状況を正確に把握しやすく、未使用ライセンスの特定にも活用できます。一方、SSOに未連携のSaaSはこのデータだけでは拾えないため、他のソースと組み合わせることが必要です。
③全社アンケート
経費明細やSSOログでは見えてこないシャドーITを発見するために、全社向けのアンケートが有効です。「業務で使っているツール・アプリを教えてください」という形式で収集します。個人払いのSaaSや部門独自で契約したサービスが浮き彫りになります。匿名回答可にすると回答率が上がります。
棚卸し結果を整理するSaaS台帳は、以下の項目を最低限含めるようにします。
Excelやスプレッドシートで管理する場合、更新月のソートを活かして「直近3ヶ月以内に更新を迎えるサービス」を優先的にレビューする運用が効果的です。
Excelでの棚卸しは初回の把握には有効ですが、継続的な管理には限界があります。SaaS管理ツールを活用すると、新規契約の自動検知や利用状況のリアルタイム把握が可能になります。
JosysのSaaS Discoveryは、経費データやSSOログを自動分析し、組織内のSaaSを可視化します。管理外のシャドーITも自動で検出するため、手動アンケートに頼らずに網羅的な棚卸しが実現します。国内外1,000社以上の導入実績を持ち、350以上のアプリ(31カテゴリ)との連携に対応しています。
棚卸しで全SaaSを可視化したら、次は「どのSaaSが無駄か」を数値で判断します。感覚ではなくデータに基づいた優先順位づけが、削減施策の効果を最大化します。
ライセンス利用率とは、契約ライセンス数に対して実際にアクティブに使われているユーザーの割合です。過去30日・90日のログイン記録を基準に算出します。
確認方法はSaaSによって異なります。多くのSaaSは管理コンソールに利用状況レポートが用意されており、「Last Login」や「Active Users」といった項目を確認できます。SSOを活用している場合は、IdP(Identity Provider)側のログからも利用状況を一元把握できます。
Productivの調査によれば、SaaSライセンスの平均45%しか定期的に活用されていません。自社の利用率がこれを下回るSaaSは、ライセンス数の見直しや解約の優先候補になります。
すべてのSaaSを同時に見直すことはできないため、優先度を設定して取り組む順番を決めます。「費用の高さ」と「利用率の低さ」の2軸でマトリクスを作ると、優先度が明確になります。
削減優先度マトリクス
このマトリクスで最優先と評価されたSaaSから順番に、ステップ3・4の施策を適用していきます。
未使用ライセンスの削除は、最も即効性が高いコスト削減施策です。分析から削除まで数週間で完結し、月5〜15万円の削減が期待できます。

退職者アカウントを特定するための基本的な手順を解説します。
Step 1:在籍中の従業員リストを取得する
人事システムや名簿から、現在在籍している全従業員の情報(氏名・メールアドレス)を取得します。退職日・異動日の情報も合わせて収集しておくと、後の照合作業がスムーズになります。
Step 2:各SaaSのユーザーリストと照合する
棚卸しで把握した各SaaSの管理コンソールから、登録ユーザーリストをエクスポートします。在籍者リストと突合し、在籍していないメールアドレスのアカウントを抽出します。氏名の表記揺れやメールアドレス変更がある場合は手動で確認が必要です。
Step 3:削除前に確認する
名前の変更・メールアドレス変更・出向などの事情で名寄せが難しいケースがあります。削除前に一定期間(例:30日間)アカウントを「停止」状態にして影響がないことを確認してから削除するとリスクを減らせます。アカウントに紐づくデータの引き継ぎが必要な場合は、削除前に対応します。
Step 4:アカウントを削除してライセンスを解放する
確認済みの退職者アカウントを削除し、ライセンスを解放します。解放したライセンス数と削減コストをSaaS台帳に記録し、次月以降の請求額の変化を確認します。
退職者アカウントは一度削除して終わりではなく、毎月新たに発生します。以下のチェックリストを月次業務に組み込みます。
このチェックリストを毎月第一週に実施する「SaaS棚卸しデー」として定着させると、ゾンビアカウントの蓄積を防げます。担当者が変わっても業務が継続できるよう、チェックリストはドキュメントとして管理します。
手動チェックには人的ミスのリスクと工数コストが伴います。HRシステムとSaaS管理ツールを連携させることで、退職者アカウントの自動削除が実現します。
JosysのAccess Automationは、HRシステム(SmartHR、WorkDay等)と連携し、退職手続きが完了した時点で自動的に各SaaSのアカウントを停止・削除します。手動作業ゼロで退職者アカウントのゾンビ化を防止できるため、IT工数削減(最大50%)とセキュリティ強化を同時に実現します。
Sales MarkerではJosys導入後、IT工数が約50%削減されました。退職者アカウント管理の自動化がその主要な要因の一つです。人事連携による自動プロビジョニング・デプロビジョニングにより、入社・退社に伴うSaaS設定作業が大幅に効率化されます。
同じカテゴリに複数のSaaSが並行稼働している状態を解消することで、月2〜5万円以上のコスト削減と管理工数の低減が期待できます。
ステップ1の棚卸し結果を「カテゴリ別」に並び替えると、重複が見えやすくなります。以下のカテゴリごとに整理します。
同一カテゴリに複数のSaaSが存在する場合、機能比較表を作成します。主要機能・ユーザー数・月額費用・実際の利用頻度を横並びにすることで、どちらを残すべきかの判断材料が揃います。比較表は情シスが作成し、関係部署の意見を聞きながら最終判断を下す進め方が現実的です。
実際の現場でよく見られる重複統合のパターンを紹介します。
コミュニケーションツール
SlackとTeams、あるいはZoomとGoogle Meetを両方契約しているケースは多く見られます。どちらか一方に統一することで、ライセンス費用と管理工数を同時に削減できます。統合先の選定では「社外(顧客・パートナー)との連携頻度」を考慮することが重要です。社外とのコミュニケーションに使用しているツールを残す方針が現実的な選択肢となることが多いです。
ドキュメント管理ツール
NotionとConfluence、Google DriveとBox、SharePointとDropboxなど、部署ごとに異なるツールを使っているケースが典型的な重複です。全社統一のドキュメント管理基盤を決め、移行計画を立てることで長期的なコスト削減につながります。移行コストと削減効果のバランスを試算したうえで判断することが大切です。
プロジェクト管理ツール
AsanaとJira、TrelloとMonday.comといった重複も頻繁に見られます。まずは全社でどのツールが最も使われているかを確認し、移行コストと削減コストを比較して判断します。エンジニア組織と非エンジニア組織でツールの相性が異なる場合は、用途を明確に分けたうえで管理するケースもあります。
多くのSaaSは月次契約と年次契約を提供しており、年次契約の方が10〜20%安く設定されています。
年次契約への切り替えは、以下の条件を満たすSaaSに限定することが重要です。
逆に、利用状況が不安定なSaaSを年次契約に切り替えると、途中解約時に違約金が発生するリスクがあります。ステップ2のコスト分析で「利用率高・費用高」と評価したコアツールを優先的に切り替えると、リスクを抑えながら削減効果を最大化できます。
また、年次契約への切り替え交渉のタイミングは契約更新月の60〜90日前が理想的です。SaaS台帳で更新月を管理しておくことで、適切なタイミングを逃さずに交渉を進められます。
一度の最適化で終わりにせず、継続的な管理体制を作ることが長期的なコスト削減の鍵です。新規SaaSの追加、退職者の発生、利用状況の変化に対応する仕組みを整えます。
SaaS管理の運用を「いつ・何をやるか」の形で定義することで、担当者が変わっても業務が継続できます。
月次(毎月第一週に実施)
月次の作業は1〜2時間程度で完了できる規模に抑えることが、継続のポイントです。自動化ツールと組み合わせることで、さらに工数を圧縮できます。
四半期(3ヶ月ごとに実施)
四半期レビューでは、月次では見逃しがちなトレンド(利用率の緩やかな低下など)を把握できます。部署責任者を巻き込んだレビュー会議を設定すると、承認プロセスをスムーズに進められます。
年次(年度末・年度初めに実施)
年次の完全棚卸しでは、月次・四半期で積み上げてきたデータを集約し、次年度の方針を決定します。SaaS調達の承認フロー(例:情シスの事前承認必須)を見直すことで、シャドーITの発生を抑制できます。
運用カレンダーの手動実施に加え、SaaS管理ツールの自動アラート機能を活用することで、対応漏れを防げます。
設定すべき主なアラートには以下が挙げられます。
JosysのSaaS Insightsでは、これらのアラートを自動設定でき、情シス担当者がダッシュボードを常時監視しなくても問題のある状態を検知できます。AI駆動型アイデンティティガバナンスプラットフォームとして、SaaS管理の自動化を包括的に支援します。アラート通知と連動したAccess Automationにより、検知から対処までのサイクルを自動化することも可能です。
手動でのSaaS管理には限界があります。SaaS管理ツールを活用することで、可視化・分析・自動化が実現し、情シスの工数を大幅に削減できます。
JosysはAI駆動型アイデンティティガバナンスプラットフォームです。国内外1,000社以上の導入実績を持ち、350以上のアプリ(31カテゴリ)との連携に対応しています。
主な機能はSaaS Discovery(シャドーIT含む全SaaSの自動可視化)、SaaS Insights(利用率・コスト分析)、Access Automation(HRシステム連携による自動プロビジョニング・デプロビジョニング)、Access Reviews(定期的なアクセス権レビューの自動化)、Device Management(デバイス管理の統合)です。
導入企業の実績として、Anker JapanでITコスト最大75%削減、MerryBizで年間約600万円削減、MyBestでSaaS管理コスト70%削減、KCONで月40時間削減を達成しています。IT工数削減は最大50%、ITコスト削減は最大75%が公式の実績値です。
Money Forwardが提供するSaaS管理ツールです。経費精算データとの連携が強みで、支払い情報から自動的にSaaSを検出する機能が特徴です。中小〜中堅企業の情シスを主なターゲットとしており、直感的なUIで棚卸しを始めやすい設計になっています。会計・経費管理にfreee・Money Forwardをすでに活用している企業での採用が多い傾向にあります。
freeeが提供するIT資産管理・SaaS管理ツールです。freee会計・freee人事労務との連携により、会計データから自動的にSaaS支出を検出します。freee製品をすでに利用している中小企業にとって導入ハードルが低いのが特徴です。会計・人事データとIT管理を一元化したい企業に向いています。
SaaSの利用状況分析とコスト最適化に特化したツールです。各SaaSとのAPI連携によりログイン履歴を自動収集し、未使用ライセンスをリアルタイムで検出します。削減シミュレーション機能により、どのライセンスを削除すればいくら削減できるかを可視化できます。コスト最適化の数値効果を経営層に報告したい情シスに向いています。
OPTiMが提供するデバイス管理とアカウント管理を一体化したプラットフォームです。MDM(モバイルデバイス管理)機能と組み合わせて、デバイスとSaaSアカウントの両方を統合管理できます。デバイス管理とSaaS管理を一元化したい企業に向いており、現場端末の管理まで含めた包括的なIT管理を志向する情シス部門での採用が見られます。
クラウドセキュリティ・ID管理に強みを持つプラットフォームです。SSO(シングルサインオン)の提供を中心に、SaaSへのアクセス制御と利用状況把握を実現します。セキュリティ要件の高い企業での採用が多く、Microsoftとの連携実績も豊富です。SaaS管理よりもセキュリティ・アクセス制御を優先する企業に選ばれることが多いです。
サブスクリプション管理に特化したシンプルなツールです。導入コストが低く、まずSaaS支出の把握から始めたい企業に向いています。自動更新・支払いのアラート通知が中心機能で、複雑な利用率分析よりも「いくら払っているか」の把握を優先したい場合に選ばれます。IT部門だけでなく経営管理部門での利用も想定されています。
米国発のSaaSOps(SaaS運用管理)プラットフォームで、グローバル展開する企業での採用が多いツールです。Google WorkspaceやMicrosoft 365との深い連携が特徴で、ユーザーライフサイクル管理の自動化に強みを持ちます。英語UIが主体のため、グローバルチームのある企業やIT部門の英語対応力が高い組織に向いています。
ツール比較表
SaaSコスト最適化の5ステップを改めて整理します。
ステップ1:全SaaSの可視化(棚卸し) 経費明細・SSOログ・全社アンケートの3つのデータソースで、管理外のSaaSも含めて網羅的に把握します。ここを丁寧に行うことがすべての出発点です。
ステップ2:コスト分析 ライセンス利用率を確認し、費用×利用率の優先度マトリクスで削減施策の順番を決めます。感覚ではなくデータで判断することが重要です。
ステップ3:未使用アカウントの削除 最も即効性が高い施策です。退職者アカウントの特定・削除を月次業務に組み込み、月5〜15万円の削減を実現します。
ステップ4:重複SaaS・契約の統合 同一カテゴリの重複を整理し、月次契約を年次に切り替えることで月2〜5万円+10〜20%の追加削減が期待できます。プランのダウングレードでは月3〜10万円の削減も見込めます。
ステップ5:継続的な監視体制の構築 月次・四半期・年次の運用カレンダーを定め、一度の最適化で終わらない仕組みを整えます。
5ステップは順番が重要です。コスト分析より先に削除を始めても、どこに優先的にリソースを使うべきかわかりません。まずステップ1の棚卸しから始めることで、全体像を把握した上で効率的な削減施策が打てます。
棚卸しだけでも、多くの企業ですぐに削減対象が見つかります。今日からできる第一歩として、まず経費明細を開いてSaaS支出のリスト化から始めてみてください。
SaaS管理ツールを活用することで、この5ステップを大幅に効率化できます。JosysはAI駆動型アイデンティティガバナンスプラットフォームとして、棚卸しから自動化まで包括的に対応します。Anker JapanのITコスト最大75%削減、MerryBizの年間約600万円削減など、国内外1,000社以上での導入実績が積み上がっています。
関連記事:SaaSコスト削減の実例・事例まとめ
関連記事:SaaS棚卸しの進め方・完全ガイド
Sign-up for a 14-day free trial and transform your IT operations.
