
クラウドSaaSとリモートワークが広がるなかで、誰がどのシステムにどこまでアクセスできるかを統制するIAM(Identity and Access Management)の重要性が一気に高まっています。
「IAMはわかるが、IDaaSやIGAとの違いが整理できていない」「具体的に何から手を付ければいいかが見えない」という声を情シス担当者からよく聞きます。IAMは概念としての守備範囲が広く、製品カテゴリの分類が混乱しがちな領域です。
本記事ではIAMの全体像を識別・認証・認可の3層構造から噛み砕き、IDaaS/IGA/PAMといった近接カテゴリとの違い、構成要素、導入時の優先順位、SaaS管理プラットフォームとの組み合わせまでを情シスが設計に使える形で整理します。
IAM基盤の整備や見直しを担当する情報システム部門・セキュリティ責任者を主な読者として想定しています。

IAM(Identity and Access Management)は「正しいユーザーに、正しいリソースへの、正しい権限でのアクセスを与える」ための仕組みの総称です。アイデンティティ管理とアクセス管理を統合した広い概念で、ID統制全体のフレームワークと位置づけられます。
「誰が」「どのシステムに」「どんな権限で」「いつまで」アクセスできるかを一元的に統制し、必要最小限の権限(最小権限の原則)でリソースを利用させることが目的です。セキュリティ・コンプライアンス・運用効率の3軸で組織を支える土台になります。
IAMは「Identification(識別)」「Authentication(認証)」「Authorization(認可)」の3つを軸に動きます。識別は誰なのかをIDで特定する処理、認証は本人であることを確認する処理、認可は何ができるかを決める処理です。
IAMは複数のサブカテゴリで構成されます。それぞれの守備範囲を理解すると、製品選定の議論が一気に整理されます。

クラウド型のIAM基盤で、SSO・MFA・プロビジョニング・条件付きアクセスを統合提供します。Microsoft Entra ID、Okta、Google Workspace、HENNGE Oneが代表例で、現代的なIAM導入のスタートポイントです。
ID/アクセス権の棚卸し・承認ワークフロー・職務分掌(SoD)監査を担うカテゴリです。SailPoint、Saviyntが代表的で、上場企業や金融機関のような厳格な内部統制が求められる組織で必須となります。
特権アカウント(管理者・rootなど)の管理に特化したカテゴリです。CyberArk、BeyondTrust、Delineaが代表的で、特権操作のセッション録画・パスワードボールト・JIT特権付与といった機能を提供します。
従業員ではなく顧客向けのIAM。会員サイトやECのログイン基盤で使われ、SNS連携・ソーシャルログイン・大規模スケーラビリティが特徴です。Auth0/Okta CICが代表例です。
IAMは「識別→認証→認可」の3段階で動作します。それぞれの段階で違う技術と運用が組み合わさり、全体としてアクセス制御が成立します。
ユーザーが「誰なのか」をIDで特定する処理。社員番号・メールアドレス・UPN(User Principal Name)などが識別子になります。HRシステムを起点としたID管理(HRドリブン)が現代の標準アプローチです。
そのIDを名乗る人が「本物の本人か」を確認する処理。パスワード・MFA・FIDO2/パスキー・生体認証などが認証手段になります。SSO基盤に集約することで、認証ポイントを一元化できます。
認証されたユーザーが「何を許されているか」を決める処理。RBAC(ロールベース)/ABAC(属性ベース)/ReBAC(関係ベース)といったアクセス制御モデルで設計します。最小権限の原則に従い、必要なアクセス権だけを付与します。
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3つのカテゴリは関連しつつも守備範囲が異なります。製品検討時の混乱を避けるため、違いを表で整理します。
中堅企業はIDaaSを軸にIAMを構築し、上場・金融など厳格な統制が必要な組織がIGAやPAMを追加していくのが一般的なロードマップです。
IAMはセキュリティ強化だけでなく、運用効率化とコンプライアンス対応の観点でも大きな成果が出る投資です。
退職者アカウントの放置、過剰な権限付与、シャドーIT利用といった典型的なリスクを構造的に潰せます。攻撃者が侵入しても被害範囲を最小化できる「侵害前提」の設計が実現します。
入退社時のアカウント発行・削除・権限変更を自動化でき、SCIMによるSaaS同期でさらに工数を圧縮できます。SaaS数が増えるほど効果が指数関数的に拡大します。
ISMS、SOC2、PCI DSS、J-SOX、改正電帳法といった監査要件で、アクセス権棚卸し・職務分掌の証跡が標準化されます。監査時の資料作成工数も大幅に削減できます。
成果が出やすい一方、設計を誤ると「製品は入れたが運用が追いつかない」という典型的な失敗が起こります。情シスが事前に押さえるべきポイントを3つ紹介します。
ID管理はHRシステムを起点にすると最も精度が高くなります。人事異動・入退社のタイミングでIDaaSが自動更新される設計を最初から組み込むと、運用が劇的に楽になります。
ローカルアカウント・Active Directory・SaaS個別アカウントが混在する状態から一気にIAMへ移行しようとすると現場が混乱します。3〜6か月の並行運用と部署単位の段階展開が現実解です。
ロールベース設計は時間とともにロールが肥大化(ロール爆発)しやすい特性があります。四半期ごとのロール棚卸しと「不要権限の自動回収」の運用を最初から組み込むことが重要です。
国内外で利用される主要IAM/IDaaS/IGA製品を、情シスの選定観点で整理しました。価格や機能は2026年5月時点の公開情報に基づきます。
Microsoft 365契約企業の標準解です。Conditional Access・MFA・PIMをFreeから段階的に解放するライセンス体系で、エンタープライズMicrosoft環境では最有力の選択肢です。詳細はMicrosoft Entra ID 公式で確認できます。
エンタープライズSaaSとの連携数が業界最多級のIDaaS。SaaS中心の組織に最も選ばれており、7,000以上の事前統合アプリを持ちます。詳細はOkta 公式で確認できます。
IGAカテゴリの代表格。アクセス権の棚卸し・承認ワークフロー・SoD監査に強く、上場企業や金融機関で広く採用されます。詳細はSailPoint 公式で確認できます。
クラウドネイティブのIGA/IAM融合型プラットフォーム。SailPointの対抗馬として急成長中で、SaaSとオンプレ統合管理に強みがあります。詳細はSaviynt 公式で確認できます。
PAMカテゴリの世界標準。特権アカウントのパスワードボールト・セッション録画・JIT特権付与で評価が高く、金融・政府系で導入実績が豊富です。詳細はCyberArk 公式で確認できます。
国産IDaaSの代表格。Microsoft 365/Google Workspaceとの連携が手厚く、日本語サポートと国産プロダクトの安心感を重視する企業に選ばれています。詳細はHENNGE One 公式で確認できます。
IAM関連で頻出する技術用語を簡潔にまとめました。検討資料の作成や社内説明にもそのまま使えます。
ロールベースのアクセス制御。ユーザーをロール(役割)に割り当て、ロールに対して権限を付与するモデル。最も普及している設計です。
属性ベースのアクセス制御。ユーザー・リソース・環境の属性(部署・時刻・場所など)を組み合わせて動的に判断するモデル。きめ細かい制御が可能です。
職務分掌。1人のユーザーが「請求書発行」「支払い承認」のような相反する権限を持たないように制御するルール。J-SOX対応で必須となります。
IdPからSaaSへユーザー情報を自動同期するプロビジョニング標準。入退社時のアカウント作成・削除を自動化できます。
特権アカウントを常時付与せず、必要なタイミングだけ一時的に付与するアプローチ。PAMの中核機能で、特権リスクを大幅に低減できます。
業務遂行に必要な最小限の権限だけを付与する設計原則。IAM全体の基本姿勢で、攻撃時の被害範囲を最小化します。
IAMはアクセス制御の根幹を担いますが、SaaSの利用実態・ライセンスコスト・契約管理・シャドーIT検知までは守備範囲外です。SaaS数が30を超える組織では、IAMとSaaS管理プラットフォーム(SMP)の組み合わせが現実解になります。
IAM/IDaaSはアクセス権の付与状況は管理しますが、有償ライセンスの実利用率や過剰契約までは追跡しません。年間SaaSコスト最適化には別の仕組みが必要です。
部署が情シス無断で契約したSaaSはIDaaS連携対象外で、IAMの統制が及びません。クレジットカード明細やSaaS購買データを横断的に取得する仕組みが必要になります。
SaaSごとの契約期間・解約タイミング・更新前のコスト比較といった商務情報はIAM基盤の対象外です。契約書管理と利用実態の突き合わせをセットで運用する必要があります。
ジョーシスのプラットフォームは350以上のSaaS連携と31カテゴリの管理機能を備え、IAM基盤がカバーしないSaaSライフサイクル全体を統合管理できる設計です。国内外700社以上の導入実績があり、IT工数を最大50%、ITコストを最大75%削減した事例も報告されています。
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検討フェーズで担当者から多く寄せられる質問を整理しました。
IDaaS(SSO+MFA)の導入から始めるのが現実解です。Microsoft 365利用企業ならEntra ID、SaaS中心ならOktaを軸に、最初の3か月でID統制の中核を立ち上げ、IGA/PAMは段階的に追加します。
Microsoft 365利用企業ならEntra IDへの段階移行が推奨されますが、レガシーオンプレシステムが残るならActive Directory連携(ハイブリッドID)で長期共存が現実解です。Entra Connectで両者を同期します。
IAMは「アイデンティティとアクセスを統制する」概念全体、IDaaSはそれをクラウドサービスとして提供する具体的なカテゴリです。IDaaSはIAMの実装手段の1つと考えてください。
SaaS数が10を超え、リモートワーク・BYODを許容する組織であれば規模に関係なく必要です。Microsoft 365 BusinessやGoogle Workspaceに付属するIDaaS機能から始められるため、初期コストは抑えられます。
IAMは「正しいユーザーに、正しいリソースへの、正しい権限を与える」フレームワークで、IDaaS/IGA/PAMといった具体的カテゴリで構成されます。識別・認証・認可の3層モデルを土台に、HRドリブンのID管理と最小権限の原則を組み込むのが基本設計です。
ただしIAM単体ではSaaSのライセンス管理やシャドーIT可視化までは届かないため、SaaS管理プラットフォームとの組み合わせ運用が現実解になります。自社のSaaS環境を統合的に整備したい場合は、5分でわかるJosysから検討を始めるのが近道です。
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