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上場企業、スタートアップなど複数社でアドバイザーを務める長谷川真さんが解説【情報システム部門の立ち上げ方】(前編)

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今回のジョーシスラーニングのテーマは「情報システム部門の立ち上げ方」。

上場企業やスタートアップなど多くの企業のアドバイザーを担い、情シスのコミュニティでも認知度の高い「情シスSlack」の立ち上げ・運営に尽力されている長谷川真さんを迎え、実践的な情報システム部門の立ち上げ方を解説いただきます。

前編では、メインコンテンツである情報システム部門の立ち上げ方。後編ではラクスル取締役CTOを兼務する泉とのディスカッション、読者からのQ&Aを中心に解説します。


<スピーカー>
長谷川真|株式会社サイカ 情報システム マネージャー

オン・ザ・エッヂ、ライブドアからエンジニアを開始し、外資コンサル、IT広告ベンチャーにて業務改善、社内開発に従事。2020年より株式会社サイカにて情報システムを担当。2019年に「【corp-engr】コーポレートエンジニア x 情シス」というコーポレートエンジニア、情シスのコミュニティの立ち上げ、運営に関わる。コミュニティ運営での知見や人脈を活かし、スタートアップから上場企業まで、複数のIT企画、戦略策定のお手伝いを実施。

情シスにかかわることになった経緯

まずは、長谷川さんがどういった経緯で情シス業務に関わりはじめ、現在のポジションに辿り着いたのかをお話しいただきます。


情シス未経験から「情シスSlack」を立ち上げ

長谷川さん
実は情報システムの経験は直近2年半程しかありません。元々はWEBエンジニアとして20年ほど実務に携わっていたのですが、業務で情シスをやらなければならないことになったんですね。それまでのエンジニアとして経験から、情シスの役割を一部だけ担っていたこともあったのですが、あくまでも表面的なことしか理解していなかったんです。

そこで「これではマズイ」と感じ、SNSを活用して情報収集をしたり、知見のある方に色々質問をしたりしました。その中で、当時の私のように「ひとり情シス」で困っている人がたくさんいることを知ったんです。

そうした中で、コーポレートエンジニアや情報システムに興味のある人同士の情報共有、相談などを目的とした交流の場があった方がいいのではないかと考え、2019年に「【corp-engr】コーポレートエンジニア x 情シス」というSlackコミュニティ(通称:情シスSlack)を立ち上げました。現在では3,000人を超える登録者がいまして、アクティブでも600人以上のユーザーが日々積極的に情報発信などをしてくれています。

私自身も、情シスSlackを通じて色々な活動ができています。ですので、私自身が2年半という短いキャリアで色々な価値提供ができているのは、コミュニティ運営やSNSを通じて知り合った方々のおかげだと強く感じています。

画像参照元:情シスSlack公式サイト

日本企業の「情報システム」領域の底上げを担う

長谷川さん
現在は、株式会社サイカで情報システム部門の立ち上げ・運営業務をやらせていただいていますが、目的としては、『日本企業の「情報システム」領域を底上げするための支援・ハブの役割を担うこと』を掲げています。

もちろん情シスの経験が2年半と短いため、実務的な部分ではプロフェッショナルの方にサポートいただいています。ですので、私自身としては、情シスの立ち上げや運営に困っている企業と各領域のプロフェッショナルを繋ぐことがメインの活動です。

ターゲットとしているのは、情報システムの担当者が不在の企業や、何をやったらいいかわからないといった壁打ち役を必要としている企業。あるいはコンサル企業に相談するほど予算は取れないけれど、少しずつ情シスを始めたい企業などを対象としています。

具体的な支援内容としては大きく二つありまして、一つ目は「情報システム部門の立ち上げ時における採用やIT企画へのアドバイザー」としての役割。二つ目は「企業の状況にあった各種サービスの代理店業、ITベンダーの紹介」などを行っています。


情報システム部門の立ち上げにあたって

長谷川さんは、情シスコミュニティ運営に加え、数多くの企業の情報システム部門の立ち上げから運営に携わってきました。その中で、情報システム部門が存在しない企業がイチから部門を立ち上げるには、「そもそも情報システム部門のあり方について考えるべき」とお話いただきました。ここでは、長谷川さんが考える情報システム部門のあり方についてお伝えします。

情報システム部門の立ち上げでは、経営層との信頼関係構築が重要な要素となります。具体的なコミュニケーションのポイントや心がけについては、上司・経営者に信頼される情シスになるためのコミュニケーション術~信頼を得るためのアクションや信頼につながらないダメなコミュニケーションとは~(前編)で詳しく解説しています。


情報システム部門の立ち上げ方に正解はない

というのも、私自身これまでたくさんの企業の情報システム部門の立ち上げや運営に携わってきましたが、結局は経営者の考え方や企業文化によって、情報の取り扱い方やシステム導入の判断基準が異なるのです。

企業にとってIT部門はもはや経営基盤になりつつありますが、結局のところ扱うのは「人」ですから、経営者や従業員の価値観や考え方によって左右されますね。例えば、「会社の情報セキュリティを保つために出社が原則」という会社もあれば、「インターネットに繋がっていないパソコンでしか仕事をしてはいけない」という考えもあります。

そうした企業文化や経営者の価値観に合わせていくとなると、当然ながら情報システムの目的や運用方針も全く変わってくるのです。

情報システム運用では、IDやアカウント管理が基礎となりますが、それらの基本概念やデジタルアイデンティティについて理解を深めることも重要です。そもそもアイデンティティとは?ID・アカウントとの違いは?-デジタルアイデンティティのやさしい教科書では、初心者にもわかりやすく解説していますので、あわせてご覧ください。

企業におけるITの存在とは

長谷川さん
ITが登場したのは、1990年代〜2000年頃にかけてのインターネット黎明期で、インターネットバブルとも呼ばれた時代です。私もIT業界で働き始めたのは2000年頃で、渋谷・六本木あたりで活動していましたが、IT関連企業を中心にものすごい勢いがありました。とはいえ、当時のITシステムは一般企業に普及しておらず、「使えたら便利だよね」程度のものでしたし、活用範囲も限定的でした。

それが2010年頃にスマートフォンが登場したあたりから、インターネットが身近なものに変化し、日常的なシーンでインターネットを活用するのが当たり前になりました。そして、コロナ禍もあり、直近2020年以降は各企業にとってIT活用は欠かせないものとなっています。
コーポレートITの存在は、もはやビジネスのコアといっても過言ではありません。よく経営資源として、ヒト・モノ・カネが挙げられますが、現在はそこに「情報」も加わります。特に情報は、ヒト・モノ・カネの各経営資源同士を繋ぐために欠かせないものです。


「ひとり情シス」ではコーポレートITが立ち行かない

長谷川さん
ITがビジネスのコアになったことで、情報システムの対応領域が拡大しています。例えば、セキュリティ管理やシステムの導入、社内システムの開発、ヘルプデスク、ホームページの管理、社内インフラの整備など......。領域拡大に伴いネットワークにかかわるリスクも増えますから、正直「ひとり情シス」はもはや難しいですね。

特に、現在はVUCA(変動・不確実・複雑・曖昧で未来の予想が難しい状態)の時代とも言われますが、例えばサイバー攻撃や個人情報漏洩などの問題で経営が一気に悪化する可能性もありますし、競合他社が新しいシステムを導入したことでゲームチェンジが起きることもあります。

つまりVUCAの時代を生き抜くためには、常に変化に対応しなければならないということです。こうした変化に対応していくためには、足元のことだけを一生懸命やっても難しいため、組織としてしっかりと情報システムの基盤を作る必要があると感じています。

情報シス部門立ち上げの成否は経営者の考え方次第

長谷川さん
経営基盤とは、言い換えると「企業の経営を支える土台」ですが、先述したとおり、現代における経営資源はヒト・モノ・カネに「情報」が加わります。つまり、情報システム部門は企業経営のコアであると強く認識することが重要です。

私が思うIT領域の理想は、初期のROI(投資利益率)は無視することです。いきなり費用対効果を考えるのではなくて、あくまでITは投資ととらえ、中長期的に取り組むべきだと考えています。

その中で、経営基盤として他社との差別化が大事になってきますが、よく経営者の方とお話しすると「他社はどうなの?」と聞かれることがあります。この質問の意図は「他社と足並みを揃えたい」ということに他ならないのですが、この考えはとても危険だと思っています。

なぜなら、他社と比べたり合わせたりしていたら、ビジネスで勝てませんよね。あくまで他社を研究する分には良いと思うのですが、「他社がこれくらいだからウチもこれくらいでもいいだろう」という判断をしているようでは、事業を辞めた方がいいのでは?とすら思ってしまいます。少し乱暴に聞こえるかもしれないですが、それくらい危機感を持つべきだということを理解していただきたいと感じています。

一方、採用や教育など「ヒト」への投資の重要性は経営者の方も理解されていることが多いです。それと同じくらい、IT領域も投資として考えてほしいと思っています。

情報システム部門に関する質問

長谷川さん
よく情報システム部門について相談を受けることがありますので、それについてピックアップしてご紹介します。

何人に対して、何人の情報システムメンバーが適切か?

IT領域の範囲が拡大し状況も大きく変わってきているので、人数換算は辞めるべきです。たとえば、従業員数が100人の会社がいくつかあったとしても、どこも同じ状況ではないからです。企業の考え方や、現状の課題に合わせて、必要な人材を都度採用・育成していくことが求められます。

報システム部門の負担軽減や属人化の解消には、退職プロセスの合理化と自動化が役立ちます。Josysが提供する退職処理自動化の具体的な事例やソリューションについては、Josysによる従業員退職プロセスの合理化と自動化で詳しく紹介しています。

専任担当者をどのフェーズから採用すべきか?

これもよくある質問です。結論としては、情報システム部門の立ち上げから専任担当者を配置した方が良いと考えます。とはいえ、情報システムやIT領域はとても範囲が広いので、いくら専門性が高い人材であっても、すべての領域でカバーすることは不可能に近いと考えています。

なので、必要に応じて各領域のプロフェッショナルを外部アドバイザーとして雇うのがおすすめです。


IT投資の予算はどれくらいが適切か?

こちらもどこまで自社が差別化したいかによるので、一概にはいえないですね。他社と比較して予算を調整するのではなく、「◯◯を実現するためには、△△は必ずやるべき」といったように、自分たちの意志をしっかり持つことが重要だと考えます。

ひとつ参考となる情報をお伝えすると、IT分野を中心に調査・助言を行うガートナー社の調査によれば、日本企業のIT予算の割合は売上に対して1.0%だそうです。しかし、北米では3.3%、欧州・中東では2.6%となっていますので、世界的にみてもまだまだ足りない印象ですね。

とはいっても、企業によってリソースや予算にも限りがあるので、現実的にはいきなり予算を増やしたり、配置転換できないことがほとんどでしょう。どこを落とし所とするかですが、まず人員配置に関しては「その人のキャリア成長に繋げられるかどうか」をひとつの判断軸とするのも有効です。例えば、個人のキャリア成長につながらないような雑務が多い場合は、外部の委託を使った方が良いと思います。


情報システム部門の立ち上げ方

正解がないということを前提とした上で、実際にはどのようなステップで情報システム部門を立ち上げ、目指す姿の実現に向かうべきなのでしょうか。

「基本的には他の部門の立ち上げ方と変わらない」と述べる長谷川さんに、具体的な進め方を解説していただきました。

担当者を決める

長谷川さん
実は情報システム部門の立ち上げといっても、他の部門立ち上げや、抽象度の高い課題へ取り組む際の進め方と大きく変わりません。

なので、シンプルに考えれば決して難しいことではないんですよね。どうしても難しく考えてしまう要因は、情報システムの領域が広かったり、経営側にITに知見を持つ人がいなかったりすることが根本の原因かと思います。

そのため、立ち上げの際は、担当者と職務領域を決めることから始めると良いかと。誰を担当とするかについては、抽象度の高い課題に対するチャレンジ意欲があり、経営層と話ができる方が理想です。

担当者はITのプロでなくても問題ありません。結局のところ経営におけるIT・情報システムの領域は幅広いため、一人で対応するのは不可能ですし、専門的な部分に関しては外部の力が必要になります。


職務領域、ミッション・ロードマップを定義する

長谷川さん
次に担当者の職務領域や、ミッション・ロードマップを定義していきます。

多くの企業では目先の部分では「ITを活用して〇〇を実現したい」みたいなことが明確になっているのですが、それが達成された後にやるべきことや、その後の見通しが立っていないことがほとんどです。その結果、情報システム担当者の先行きが見えなかったり、雑務が中心となってしまい、本来の情報システム部門の目的とかけ離れてしまいます。

このため、ミッションやロードマップは始めの内に立てておくべきです。特に、情報システム部門の立ち上げフェーズでは、企業がありたい姿の理想を描き、そこに対するギャップを埋める作業をすることに尽きると思っています。


立ち上げ時の注意点

長谷川さん
よく情報システム部門の立ち上げが進まない理由として、「予算が厳しい」「予算がない」という声があります。しかし、これをどうにかするには経営者の考え方を変えるしかないと思っています。

また、無料でも参考にできる情報はたくさんありますし、ミッションやロードマップづくり、情報資産の棚卸しなどは予算がなくてもいつでもできるでしょう。そうしたところから少しづつでも始めていくべきだと考えています。

情報システムというとなにかシステムを構築したり、サービスを導入することを思い浮かべる方が多いのですが、導入することは目的ではなく、あくまで手段です。そこを間違えないでもらえたらなと思っています。


まとめ

情報システム部門の立ち上げ方について、数多くの経験・実績を持つ長谷川さんだからこそ聞けるリアリティのある内容をお話いただきました。
後編では、ディスカッションを通じて、さらに深く掘り下げた内容を展開していきます。

【後編はこちら】

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