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SaaS管理ツールのROIとは?投資対効果の算出方法と経営層への説明術

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SaaS管理ツールの導入効果を経営層に説明しようとしても、「どんな数字を出せばいいのか」「試算の根拠に自信が持てない」という状況に陥る情シス担当者は多くいます。ツールの必要性は肌感覚でわかっていても、稟議に通るレベルで数値化できないまま時間が過ぎていきます。

SaaS管理ツールのROIを算出する具体的な手順と、経営層に伝わる説明の組み立て方を整理します。試算に必要なデータの集め方から、保守的な数字でも十分な説得力を持たせる方法まで、実務で使える内容が中心です。情シス担当者として稟議資料を作る方、IT部門マネージャーとして予算承認を求める立場の方に参考にしていただけます。

SaaS管理ツールのROIとは何か

SaaS管理ツールのROIとは、ツールへの投資額に対して得られるリターンを数値で表したものです。IT投資全般に使われる指標ですが、SaaS管理の文脈では「削減できたコストと削減できた工数の合計」を便益として計算するケースがほとんどです。

基本の計算式は次のとおりです。

ROI(%)=(便益 − 投資額)÷ 投資額 × 100

たとえばツールの年間費用が100万円で、ライセンス削減と工数削減による便益の合計が250万円であれば、**ROIは150%**になります。この数字を明示することで、経営層は投資に見合うリターンが得られると判断できます。

SaaS管理における便益は、ライセンスコストの削減、IT工数の削減、セキュリティリスクの低減による損失回避の3つに分類できます。それぞれを金額に換算してROIを算出することが、稟議を通すための基本的なアプローチです。

なぜ今、SaaS管理のROI算出が求められるのか

企業のSaaS導入数は急速に増えています。ハンモック社の調査では、**8割以上のIT部門担当者が「2年前と比べてSaaS導入数が増加した」**と回答しており、6割以上が「社内のSaaSの契約・利用状況の把握」に課題を感じています。

Gartnerは「SaaSのライフサイクルを一元管理できていない組織は、2027年まで少なくとも25%をSaaSの過剰支出によって浪費し続ける」と指摘しています。過剰支出の主な原因は3つで、未使用ライセンス、重複するツール、退職者のアカウント放置です。

国内でも、38%のクラウドライセンス費用が無駄になっているという調査結果があります。100名規模の企業であれば、月額5〜15万円、年間で60〜180万円規模の無駄が生じている計算です。この数字を自社の実値として示すことが、稟議を通す第一歩になります。

さらにGartnerは、SaaSを一元管理できていない企業はサイバーインシデントやデータ損失のリスクが一元管理している企業の5倍高いとも述べています。セキュリティリスクも、ROI算出に組み込むべき要素です。

参考:情報システム部門 SaaS管理の実態調査(ハンモック)

参考:Lessons from the Gartner Market Guide for SaaS Management Platforms(Torii)

参考:“38%のクラウドのライセンス費用が無駄”という現実(TechTargetジャパン)

SaaS管理ツールのROI算出:3つのステップ

ROIの算出は、現状コストの把握、便益の試算、投資額との比較という3段階で進めます。手順を順番に踏むことで、根拠のある数字を経営層に示せます。

ステップ1:現状のSaaSコストを把握する

まず、自社でどれだけのSaaSコストが発生しているかを棚卸しします。把握すべき項目は4つです。

  • 契約中のSaaSの種類と月額・年額費用
  • 各SaaSのライセンス数と実際のアクティブユーザー数
  • 退職者・異動者のうち、アカウントが残存しているライセンス数
  • 情シスが把握していないシャドーIT(クレジットカード明細での確認が有効)

棚卸し作業そのものが、削減余地の発見につながります。実施した企業の多くで、総ライセンス費用の10〜30%程度の無駄が見つかると報告されています。

ステップ2:ツール導入後の便益を試算する

次に、SaaS管理ツールを導入した場合の削減効果を試算します。コスト削減と工数削減の2軸で計算します。

コスト削減の試算例として、従業員100名規模を想定した場合の目安は下表のとおりです。

削減項目 試算根拠 年間削減額(試算)
未使用ライセンスの解約 全ライセンスの15%が未使用と仮定、月額500円×100名×15% 約110万円
退職者アカウントの即時停止 年間退職者10名、平均3ヶ月分の放置コスト ライセンス費用の変動次第
重複ツールの統廃合 同機能ツールを1本に集約 月額数万〜数十万円

工数削減の試算例は次のとおりです。

削減業務 現状の工数 削減後 削減時間/年
入社時アカウント発行 1名あたり2時間 0.2時間 年間採用20名なら36時間削減
退職時アカウント削除 1名あたり1.5時間 0.1時間 年間退職10名なら14時間削減
SaaS利用状況の月次確認 4時間/月 0.5時間/月 42時間/年削減

時給3,000円の情シス担当者が年間92時間削減できると、約27万円相当の工数削減になります。

ステップ3:ROIを計算して経営層に提示する

コスト削減と工数削減の合計便益から、導入費用・年間ライセンス費用・実装コストを差し引いてROIを算出します。

年間便益が200万円(コスト削減150万円、工数削減50万円)で、ツールの年間費用が60万円であれば、**ROIは約233%**です。

ROI =(200万円 − 60万円)÷ 60万円 × 100 = 約233%

この数字に加え、セキュリティインシデントの防止効果を定性的な便益として補足することで、稟議の説得力が増します。情報漏洩一件あたりの損害額は、対応コストと風評被害を含めると数千万円規模になることも少なくありません。

コスト削減のROI:ライセンス最適化で得られる効果

ライセンス最適化は、SaaS管理ツールによるコスト削減の中心です。未使用ライセンスの解約、重複ツールの統廃合、シャドーITの可視化と制御の3つが主な対象になります。なお、以下で紹介する削減率は導入企業の事例にもとづくものであり、効果は個社の状況により異なります。

ライセンス最適化の起点は利用状況の可視化です。利用していないライセンスを解約するだけで、年間のSaaS費用の10〜20%を削減できるケースがあります。100名規模で年間SaaS費用が1,000万円あれば、100〜200万円の削減余地があります。

シャドーITの発見も、見落とされがちなコスト削減の機会です。情シスが把握していないSaaSは、セキュリティリスクであるだけでなく、重複契約によるコスト浪費の原因にもなります。SaaS管理ツールがSaaSディスカバリー機能を備えていれば、ブラウザ拡張やSSO連携を通じて未申告のSaaSを自動検出し、対応につなげられます。

Anker Japanの事例

ジョーシスのSaaS Discoveryモジュールを導入したAnker Japanは、管理業務のコストを最大75%削減しました。デバイスの購入からキッティング、SaaS管理までをワンストップで運用し、ITチームが毎月手作業で行っていたSaaSの利用確認を自動化した結果です。

参考:Anker Japan 導入事例(ジョーシス公式)

MyBestの事例

MyBestはSaaSアカウント管理の作業時間を約7割削減しました。導入前はアカウント関連の管理に月20〜23時間かかっていましたが、ジョーシス導入後は6時間まで短縮しています。利用状況のレポートを定期的に生成できるようになったことで、不要なライセンスの特定と解約判断も迅速に行えるようになりました。作業時間の削減は人件費の削減に直結するため、コスト面のROIにも寄与します。

参考:株式会社マイベスト 導入事例(ジョーシス公式)

Sales Markerの事例

Sales Markerは情シスの業務時間を約50%削減しました。急速な人員増加でアカウント発行・削除が追いつかない状態だったところ、ライセンス管理に費やしていた時間が半減し、情シス担当者が戦略的なIT施策に集中できる環境が整っています。

参考:株式会社Sales Marker 導入事例(ジョーシス公式)

工数削減のROI:アカウント管理自動化で得られる効果

IT工数削減の効果は、SaaS管理ツールのROIの中でも見落とされやすい部分です。従業員のアカウント管理に費やす工数は、組織規模が大きくなるほど積み上がります。

入社時のアカウント発行、部署異動時の権限変更、退社時のアカウント削除というJMLプロセスを自動化することで、1件あたりの工数を大幅に削減できます。入社1名あたりの対応時間が2時間から0.2時間に、退社時の対応が1.5時間から0.1時間に短縮されるケースが報告されています。年間採用・退職者が合計30名の企業であれば、年間50時間以上の削減が見込めます。

情シス担当者の時給を3,000〜5,000円で換算すると、年間15〜25万円の工数削減効果が生まれます。直接的なコスト削減ではありませんが、情シス担当者がルーティン対応から解放されることで、より付加価値の高い業務に集中できるという間接的な価値も生じます。

MerryBizの事例

MerryBizは年間約600万円のコスト削減を実現しています。アカウント管理の自動化により、入退社対応にかかっていた時間が大幅に圧縮されました。

M&A Cloudの事例

M&A Cloudは年間200時間の工数削減を達成しています。手動で行っていたSaaS棚卸しとアカウント管理を自動化し、情シス担当者が本来注力すべき業務に時間を使えるようになりました。

KCONの事例

KCONは月40時間の工数削減を達成しており、年換算で480時間分の業務を削減しています。

参考:ジョーシス 導入事例一覧(ジョーシス公式)

セキュリティリスク低減のROI:定性的効果の数値化

セキュリティリスクの低減は、数値化しにくいものの、経営層への説明では欠かせない要素です。リスクを定量的に示す方法を知っておくことで、説明資料の説得力が上がります。

退職者のアカウントを放置すると、不正アクセスや情報漏洩のリスクになります。IPAの調査では、内部不正の起点となるケースの多くが元従業員のアカウント悪用だと指摘されています。情報漏洩インシデント一件あたりの損害額は、対応コスト・顧客への補償・風評被害を含めると数百万〜数千万円規模になります。

退職者アカウントを即時無効化するプロセスをSaaS管理ツールで実現することで、このリスクを大きく低減できます。効果を定量化する際には「期待損失の低減」という考え方が使えます。

期待損失 = インシデント発生確率 × インシデント一件あたりの損害額

たとえば発生確率を1%、損害額を1,000万円と仮定すると期待損失は10万円です。SaaS管理ツールでリスクを90%低減できれば、9万円の期待損失を回避できる計算になります。保守的な数字であっても、リスクを定量的に示すこと自体が経営層への説明で有効に機能します。

参考:IPA 情報セキュリティ10大脅威

TCO(総所有コスト)の視点から見るSaaS管理ツールの費用対効果

ROIの精度を高めるには、投資額をライセンス費用だけで計算しないことが重要です。SaaS管理ツールの総コストはTCOの視点で把握する必要があります。

TCOに含まれる主な項目は次のとおりです。

  • 初期費用(実装・セットアップ・データ移行)
  • 年間ライセンス費用(ユーザー数・機能によって変動)
  • 社内リソースコスト(導入・運用に関わる情シス担当者の工数)
  • トレーニング費用(ユーザー向け研修の実施)
  • 統合コスト(既存の人事システム・ID管理との連携設定)

これらの合計が投資額の分母になります。SaaS管理プラットフォームは従量課金モデルが多く、従業員100名規模であれば月額の目安は製品によって大きく異なりますが、導入前に複数の見積もりを取って比較することが重要です。

ROI試算は、1年目、2〜3年目、安定運用期のフェーズ別に計算することをおすすめします。1年目は実装コストが上乗せされるため、ROIがマイナスになることもあります。2〜3年目以降は実装コストが消え、運用が安定するにつれて便益が積み上がります。SaaS管理プラットフォームの導入効果が最大化されるのは導入から6〜12ヶ月後が多く、ROI試算は最低でも3年間のライフサイクルで行うことが現実的です。

参考:TCO and ROI Calculator for effective SaaS evaluation(Valuecore)

経営層への説明術:ROIを伝えるための3つのポイント

ROIの計算ができても、経営層に伝わらなければ稟議は通りません。情シス担当者が投資対効果を説明するときに有効な3つのポイントを整理します。

ポイント1:現状の「見えないコスト」から話を始める

経営層に響くのは**「今、すでにいくら損しているか」という具体的な数字**です。業界統計だけでなく、自社の棚卸しで把握した未使用ライセンス数・シャドーIT数・退職者アカウント数を示すことで、問題の実態が伝わります。

「この状態を放置すると、来年も同規模のコストが無駄になります」という切迫感を持って伝えることで、経営層の意思決定を促しやすくなります。

ポイント2:保守的な試算でも十分な効果を示す

ROIの試算は楽観的な数字ではなく、控えめな数字で行うことが鉄則です。削減可能なライセンスを10%と見積もり、工数削減も最小限で計算する。それでも十分なROIが出るなら、根拠が強固になります。「最低でもこれだけの効果が見込める」という保守的な試算が、経営層からの承認を得やすくします。

ポイント3:コスト削減の先にある業務価値を語る

経営層は「コストを削減した後に何が起きるか」にも関心を持っています。情シスがルーティン対応から解放されることで、DX推進や戦略的なIT投資に集中できるという未来像を描くことで、ツールを単なるコスト削減手段ではなく、組織の成長を支えるインフラとして位置づけられます。

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SaaS管理ツールのROIを最大化するためのポイント

ツールを導入するだけでROIが自動的に積み上がるわけではありません。導入後の運用プロセスを整えることが、継続的なROI確保につながります。

実践的なポイントは4つあります。

1つ目は、定期的なライセンス棚卸しのサイクルを設けることです。四半期ごとにSaaS管理ツールのレポートを確認し、90日以上未利用のライセンスを解約する運用ルールを作ることで、コストを継続的に最適化できます。

2つ目は、入退社フローへのアカウント管理の組み込みです。HR部門と連携し、退職・異動の情報をSaaS管理ツールにリアルタイムで反映させることで、退職者アカウントの放置を防ぎます。

3つ目は、シャドーITの定期的なスキャンです。ディスカバリー機能を活用して四半期ごとに未申告のSaaSを洗い出し、リスク評価と対応方針を決定します。

4つ目は、ROIレポートの定期的な経営層報告です。ライセンス最適化で削減した金額や工数削減の実績を数字で報告し続けることで、ツールの継続的な価値を組織内で可視化します。

よくある質問(FAQ)

Q:SaaS管理ツールのROIはどのくらいの期間で回収できますか?

6〜18ヶ月での投資回収が報告されているケースが多いです。導入規模・現状のSaaS数・自動化の範囲によって異なりますが、未使用ライセンスが多い組織ほど短期間での回収が見込めます。SaaSの棚卸しを一度実施するだけで、即座にコスト削減効果が出るケースも少なくありません。

Q:ROI算出のために、事前にどのようなデータが必要ですか?

最低限必要なデータは4つです。現在契約中のSaaSの種類と費用、各SaaSのライセンス数とアクティブユーザー数、情シス担当者の月間アカウント管理工数、直近1年間の採用・退職者数です。これらのデータが揃っていない場合でも、業界平均値を使った概算から始めることができます。

Q:小規模な組織(50名以下)でもROIは出ますか?

従業員50名以下の場合、ライセンス削減額は限られますが、工数削減の効果は組織規模に比例しません。情シス担当者が1〜2名の組織ほど、自動化による工数削減のROIが相対的に大きくなります。少人数で多くの業務を担う情シス担当者の負担軽減という観点からも、導入効果は得られます。

Q:SaaS管理ツールの費用対効果を社内で説明するための資料はありますか?

ジョーシスでは、ROI算出のサポートを含む詳細な導入資料を提供しています。

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まとめ

SaaS管理ツールのROIは、ライセンスコスト削減、IT工数削減、セキュリティリスク低減の3要素を数値化することで算出できます。現状の見えないコストを棚卸しで把握し、保守的な試算でも十分なROIが得られることを示すことが、経営層を説得するための土台です。

Gartnerの調査では、SaaS管理プラットフォームを活用する組織の割合は2028年までに70%以上に達すると予測されています。早期に導入して最適化のサイクルを回す組織が、中長期的なコスト競争力とセキュリティ体制で優位に立てます。

まず自社のSaaSコストを棚卸しし、削減余地の規模感を把握することから始めてください。数字が出れば、ROIの試算と経営層への説明は自然と組み立てられます。

ROI算出を含めたSaaS管理ツールの詳細な活用方法に関心がある方は、デモセッションで個別にご相談いただけます。

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